近年提案した、BDG-BOCDA法における空間分解能を改善する光源強度変調法において、より周波数掃引レンジの広いレーザーを利用して更なる高空間分解能化を試みた。その際、高空間分解能化に伴って測定スペクトル幅が広がる現象が見られた。対処法の一つとして傾斜利用法を用い、100 m偏波保持ファイバ中の2 cm冷水区間の検出に成功している。 さらに、相関ピーク位置の代わりにプローブ周波数シフトを走査することで、分布測定を実現する手法を実証した。プローブ周波数シフトの走査はBOCDA出力の取得時に必要なため、本手法によって温度/歪の分離計測においても測定時間を短縮できる可能性がある。 また、本研究で考案した手法に基づいてBOCDA法の基本原理を再考し、BDGと同様に相関ピーク位置を走査せずにファイバ全体のブリルアンゲイン分布を再構成する新しい手法を提案・実証した。これまで提案されている全てのBOCDA法では、ビートスペクトルと呼ばれる光の状態を位置・周波数空間においてデルタ関数状にし、ピーク位置を走査することでゲインスペクトルを推定していた。本研究で考案したRT-BOCDA法では、ビートスペクトルを直線状に成形し、ゲインスペクトルのラドン変換を取得する。これに逆ラドン変換を施すことで元のBGS分布が再構築できる。この手法では、BOCDA法のユニークな特徴であるランダムアクセス性が失われてしまうが、原理的には真のBGS分布が測定可能で背景光雑音がない、光パワーの利用効率が高いなどのメリットがある。また本手法は、CTスキャンの測定技術を分布型ファイバセンサに初めて適用するものであり、相関領域法の新しい可能性を示している。
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