テラヘルツ(THz)帯電磁波を活用したセンシング技術は、モノを壊さずに製品内部の劣化状況を診断することができる強力な非破壊検査手法として注目を集めている。しかし、既存のTHz計測システムは大規模な測定系を必要とするため自由に持ち運ぶことができず、そのため、モノの稼働現場における即時検査手法としては応用ができないという問題がある。 そこで本研究では、モノの形状や設置場所といった測定環境に制限されない自由度の高いTHz計測システムの確立を目指し研究を実施した。 2020年度は当初の計画であるウェアラブル非破壊検査デバイスの開発と即時検査応用の実証実験に取り組んだ。2019年度に確立した自己整合成膜技術を用いてカーボンナノチューブ(CNT)膜をポリイミドフィルム上に2次元にアレイ化することで、任意の形状に合わせて切り貼りして使用できるフレキシブルTHzカメラパッチを開発した。また、開発したカメラパッチを用いて、プラスチック板内部の欠損診断、配管内部のつまり箇所の可視化、ヒートワイヤーのリアルタイムモニタリングといった様々な非破壊検査応用を達成した。加えて、ドーパント蒸着法におけるドーピング箇所の染み出し量を伝熱解析により明らかにした。先行研究における実験結果では蒸着法におけるドーパントの染み出し量は100um前後とされていたが、伝熱解析の結果、この値は「ドーパントの染み出し量」と「測定系由来の熱の染み出し量」の合算であることがわかり、真のドーパント染み出し量は15um程度であることが判明した。現在、この15umのドーパント染み出しが何に由来するものかの解析を行っており、今後の原因解明および対策によりドーパント染み出し量を1um程度に軽減することで微細ドーピング手法を確立することを目指す。
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