光源の温度と空間コヒーレンスの関係を実験的に調べるために新規に干渉計を提案した.空間コヒーレンスは面方向だけでなく光軸方向にも依存する.光軸方向の空間コヒーレンスを計測できれば,それと温度との関係を調べることができ,温度計測にも有効である.そこで,光軸方向にのみシアを付与可能な干渉計を提案した.この干渉計では,時間コヒーレンスとは独立に空間コヒーレンスを計測でき,熱放射のような時間コヒーレンスの短い光源にも適用できる.この新規提案した干渉計は論文として発表した. この干渉計を用いて光源の温度と空間コヒーレンスの関係を実験的に調べた.異なる温度ごとで空間コヒーレンスのパターンを比較した結果,違いを確認できた.しかし,干渉縞の記録に用いたイメージセンサーの非線形性がパターンの分布に影響した可能性は残った.そのため,温度に依存した有意な変化かは,イメージセンサーの線形性の評価など引き続き検討が必要である.ただしその一方で,その線形性を干渉計固有の因子(装置関数)の一部とみなすことができれば,温度―コヒーレンスの標準放射源を用いた校正により決定できる可能性がある.そこで,当初の予定どおり,その標準放射源の作製を試みた.グラファイトの加工と背面からのレーザー加熱により温度分布を変調した.その熱放射の空間コヒーレンスの分布は基の温度分布に依存していた.しかし,再現性が低く,標準放射源としての使用には至っていない.理由は昇温によるグラファイトの劣化である.窒素パージをおこなったものの,完全には酸化を防止できなかった.対策として,より耐熱性の高い炭素材料の使用などを考えている. 以上のように,温度計測の実現には至っていない.しかしながら,新規に干渉計を提案し,温度と空間コヒーレンスの依存性のさらなる検討を可能とし,今後,温度計測を実現するための下地を構築することができた.
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