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2019 年度 実施状況報告書

原子の共鳴現象を利用した電磁波リアルタイムイメージングの研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K15007
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

東島 侑矢  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (20805147)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワードマイクロ波 / パッチアンテナ / イメージング / 二重共鳴 / セシウム原子
研究実績の概要

2019年度は、本研究の肝となるマイクロ波イメージングを行うための測定系の構築と検証用のパッチアンテナの設計と評価の2点について研究を進めた。まず、測定系を構築しガスセル励起用レーザーの強度を検出器によりモニターできること、試作したパッチアンテナから放射されるマイクロ波により二重共鳴信号が観測できることを確認した。
次に検証用パッチアンテナの設計では、パッチアンテナ上部に石英ガラス製のガスセルが配置された状態で、パッチアンテナの動作周波数がセシウム原子との共鳴周波数にあたる9.192 GHz近傍となることが望ましい。上記を考慮したパッチアンテナを得るため電磁界解析ソフトを用いて解析と設計をおこなった。解析の結果、上部に配置されるガスセルの影響を低減するため、給電用マイクロストリップ線路とアンテナパッチ部とのマッチングを適切に行う必要があることが分かった。また、ガスセルとアンテナとの距離に応じて共鳴周波数が変化するため、実用上はガスセルとアンテナの位置関係に注意する必要があることが分かった。最終的に4種類の検証用パッチアンテナを試作した。試作されたパッチアンテナは、解析結果と同等の性能を持つことを実測により確認した。
構築した測定系は、残念ながらまだ二重共鳴信号強度が弱く、CCDカメラでのマイクロ波の印可によるセシウム原子の蛍光強度の変化を観測出来ていない。この点はより高感度なCCDカメラの使用や、ヘルムホルツコイルを用いた外部磁場の調整により二重共鳴信号のSN比の向上を目指すことで解決が見込めるため、次年度ではこの点に注力し研究を進める。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初、初年度にはCCDカメラによってパッチアンテナから放射する磁界分布を可視化するところまでを目標としていた。評価用パッチアンテナの検討と設計試作、レーザーやガスセルを含む光学系の構築は問題なく実施した。一方で現在の測定系では、検出器による2重共鳴信号の観測は出来ているものの、CCDカメラよる磁場分布のイメージングまでには至っていない。しかしながら、以下の課題を明らかにすることができたので、次年度はこれらの改善を目指す。
①ガスセルが配置されている空間は、地磁気などの不要なDC外部磁場が存在している。これにより、セシウム原子の吸収線がゼーマン効果により分裂し二重共鳴信号のSN比を低下させている。
②現在使用しているCCDカメラは、最長露光時間が1分程度である。より露光時間の長いCCDカメラであれば、弱い蛍光強度比でも十分に観測できるようになる。また、露光時間の増加に合わせてバックグラウンドの迷光の影響で画像が不鮮明となっているため、十分な暗室環境を作る必要がある。
③励起用の半導体レーザーは、現行のドライバでは強度や温度調整の長期安定性に課題がある。半導体レーザーの一部を分岐してモニター用検出器に入れ、この信号をドライバへフィードバックして制御するなど安定化の機構が必要である。

今後の研究の推進方策

現在までの進捗状況を踏まえて、以下の点について研究を推進する。
①ヘルムホルツコイルの導入により測定系周辺の不要磁場を調整し、ガスセルが配置されている中心の領域でゼロ磁場に近い状況作る。磁場の強度については二重共鳴信号をモニターしながらヘルムホルツコイルへの印可電圧を調整して評価する。これにより、セシウム原子の吸収線を縮退させ、SN比の向上を目指す。
②現在用いているCCDカメラよりも、長露光時間かつ、より感度が高いものを検討する。露光時間の増大により、発生しうるバックグラウンドの迷光の影響を除去するため、適切な暗室環境を作る。
③励起用の半導体レーザーへのフィードバック制御機構を検討する。初めは、モニター検出器を用意し、ガスセル通過前と後でバックグラウンドのレーザーの強度変動を測定しレーザーのドリフトの影響を低減させる。よりSNのよい検出器を導入し、測定再現性を向上させる。

次年度使用額が生じた理由

初年度は、実験系構築のため物品費として光学部品、マイクロ波関連部品、DC電源等を主に調達した。加えて実験用のアンテナの試作をおこなった。当初、物品費のうち半導体レーザーやアンテナ評価用ガスセルを計上していたが、測定系立ち上げにおいて原子の蛍光を観測するため、高感度なCCDカメラ及び適切なレンズが必要となったため、当初の予定から変更しCCDカメラを購入した。このため、直接経費の内訳を一部変更した。アンテナ評価用ガスセルについては、次年度を予定している。
また初年度予定していた研究成果の外部発表については、本年度は実施しなかったため翌年度以降に変更とし、次年度使用額として持ち越しをした。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 原子の共鳴現象を利用した電磁波リアルタイムイメージングための基礎的検討2019

    • 著者名/発表者名
      東島侑矢
    • 学会等名
      2019年度 計量標準総合センター成果発表会

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公開日: 2021-01-27  

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