本研究では、医療・食品、バイオテクノロジー、ナノ物質・材料等の幅広い分野で行われている微小力計測の信頼性を向上させるため、キッブルバランス法の原理を応用した電磁力による精密な微小力発生技術・計測技術の開発を目的とする。キッブルバランス法は、磁場に置かれている導体に電流を流した際の電気的仕事率と、ある速度で導体を動かした際の機械的仕事率を釣り合わせる手法である。前年度は、研究代表者はキッブルバランス法の原理に基づいて新たな手法を提案し、従来のコイルの直線運動型の装置と違い、磁石の回転運動型の電磁力による微小力発生装置を開発した。 本年度は開発した装置と別途開発整備する微小力計を用い、提案の手法にある誘導起電力測定モードと力発生モードの二つの計測実験を行い、電磁力による精密な微小力を発生させ・計測することが可能にした。具体的に下記の項目を実施した。①誘導起電力モードにおいては、一定の角速度で磁石を回転させ、別途整備の計測装置で磁石の角度と発生した誘導起電力を同時に測定した。誘導起電力、磁石角度、時間により本装置の固有値を精密に評価した。装置の固有値は矩形コイルの巻き数、磁石の残留磁束密度と矩形コイルの面積との積である。また、磁石の残留磁束密度の温度依存性を検討した。②力発生モードにおいては、精密な微小力を発生させた。装置の固有値より微小力と電流の関係を検討し、別途整備の精密な可変電流源を用いて矩形コイルに必要となる電流を流し、電磁力による微小力を発生させた。別途整備の微小力計に発生させた微小力を負荷し、ミリニュートンオーダーの力の単純繰返し性及び再現性を測定し、良好な結果(10^-4)を得た。
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