研究実績の概要 |
スピン波の位相干渉を用いた再構成可能な論理素子を動作実証した。パルスレーザー堆積法で作製したイットリウム鉄ガーネット(Y3Fe5O12, YIG)薄膜をリソグラフィ法とウェットエッチングにより、クロスバー(十字型)形状に加工し、スピン波干渉素子とした。クロスバーの4端のうち、隣り合う2つを静磁後進体積波(BVMSW:ポート1)と静磁表面波(MSSW:ポート2)との入力、ポート2の対向を干渉波検出のポート3とした。残るポート4にはPt薄膜を成膜し、局所的なジュール加熱によって干渉波を外場変調した。各スピン波の分散関係に基づいて波長変換され、その結果、干渉波はXORとXNORの論理表を満たす再構成可能な論理素子として動作することが実証された。 本研究課題では、低消費電力の観点から新たな情報演算のキャリアとして期待されるスピン波に注目し、スピン波演算に向けた材料・デバイス開発を実施した。ガーネット型スピンクラスターグラスはエージングメモリ効果による特徴的な磁気履歴記憶性質を示すとともに、物理リザバー計算に必要な短期記憶性能について優れた性能を示すことが明らかとなった。また、薄膜結晶成長におけるエピタキシャル格子歪を最適化することにより、傾斜歪構造を導入した希土類鉄ガーネット薄膜では、フレクソエレクトリック効果による誘電分極と磁化が共存することが示唆され、スピン波の電気変調への応用可能性を示した。スピン波素子は局所加熱による変調技術を開発し、位相干渉によって再構成可能な論理回路を動作実証した。
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