研究課題/領域番号 |
19K15027
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野崎 幹人 大阪大学, 工学研究科, 技術職員 (90646217)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 窒化ガリウム / 2次元電子ガス / 放射光光電子分光分析 / MOS界面 / ゲート絶縁膜 |
研究実績の概要 |
ショットキーゲート型のAlGaN/GaNヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)はAlGaN/GaN界面に誘起される高移動度・高濃度の2次元電子ガス(2DEG)により高周波動作を実現できるが、しきい値電圧が0 V以下になるノーマリー・オン動作やショットキーゲート部のリーク電流による印可電圧の制限等の課題がある。ノーマリー・オフ化には誘導結合プラズマを用いた反応性イオンエッチング(ICP-RIE)によるゲートリセス構造の導入が用いられるが、加工損傷による2DEG特性の低下や加工面に形成するMOS構造の界面特性劣化等が懸念される。本研究課題ではICP-RIEによるリセスエッチングと絶縁膜堆積によるMOS構造の形成を合わせて、しきい値電圧のノーマリー・オフ化と低ゲートリーク電流および良好なMOS界面特性の実現を目指す。 2019年度の研究ではホール効果測定の結果からAlGaN層の薄層化の際に極低バイアス電力のICP-RIEを用いることで2DEG特性の加工損傷を抑制できることを明らかにした。また、放射光光電子分光分析による加工表面の評価では極低バイアス電力のICP-RIE がAlGaN層の薄層化時の加工表面の変質抑制に有効であることを示した。MOS界面の電気特性評価からは極低バイアス電力のICP-RIEによる加工表面の変質抑制が加工面上に形成するMOS界面特性の劣化抑制にも効果的であることがわかった。さらに加工表面の損傷低減と合わせて、加工変質層を消費して良質な界面酸化層とすることで良好なMOS界面特性が実現できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究ではAlGaN/GaN高移動度トランジスタのしきい値電圧制御と高性能化の両立を目指す上で重要な知見が得られたため、論文投稿や複数の学会発表による情報公開を実施することができた。また、加工変質層の酸化が良好なMOS界面特性実現のために有効であること等、次年度以降のゲート絶縁膜堆積プロセスの開発にとっても有用な結果を得ることができた。しかし、ALD法(およびCVD法)による酸窒化膜の成膜に関してはまだ十分な進捗が得られていないことから区分「(2)おおむね順調に進展している(Progressing Rather Smoothly)」とした。
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今後の研究の推進方策 |
GaN MOSデバイス用の高性能な積層型の酸窒化膜の形成を目指す上で、まずはその構成要素となる酸化膜・窒化膜の成膜プロセスを最適化する必要がある。成膜プロセスの最適化により不純物・欠陥を十分に減らし、高い絶縁性と信頼性の獲得を狙う。その後、各構成要素を組み合わせた積層・混合膜を成膜し、トランジスタのしきい値電圧(もしくはキャパシタのフラットバンド電圧)や絶縁特性、MOS界面の電気特性等について検討をし、単一膜では実現できない高性能な積層型酸窒化膜の成膜を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は研究進捗の都合上、超高純度プロセスガスや電子工業用の薬品等の購入が少なかった。特に高額な半導体基板の購入をすることもなかったため次年度以降に残額を繰り越した。 令和2年度は超高純度プロセスガスや電子工業用の薬品等の実験に使用する消耗品の購入に加え、必要に応じて高額な基板類の購入や学会参加費、論文出版等に使用する予定である。
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