研究課題/領域番号 |
19K15042
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松本 翼 金沢大学, ナノマテリアル研究所, 助教 (00739568)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / MOSFET / パワーデバイス / MOS |
研究実績の概要 |
ダイヤモンド半導体は、高いキャリア移動度や熱伝導率等、優れた物性を有しているが、新しい半導体であるがゆえに、デバイス応用は進んでいない。申請者は世界に先駆け、リンドープn型ダイヤモンドを用いた反転層MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor)の作製、動作に成功した。しかし、そのチャネル移動度は31 cm2/Vsと、1,000 cm2/Vsを超えるバルク移動度に比べ、非常に低い。本研究開発では、MOS構造における半導体の不純物濃度や表面ラフネスが、反転層ダイヤモンドMOSFETの低いチャネル移動度の原因である界面準位やキャリア散乱に与える要因を科学的に明らかにすることを目的に、申請者が独自に開発を進めてきた不純物濃度と平坦性の制御に優れた窒素ドーピング技術を導入する。現在までに、窒素濃度を1017 ~ 1021 cm-3の範囲で制御する技術を確立した。一方で、1015 ~ 1017 cm-3の窒素濃度も必要であるため、今後の課題である。 今後は、窒素ドープn型ダイヤモンドの成長に用いるガスの精製器を導入することができたため、その立ち上げを行うとともに、さらなる窒素濃度の低濃度化制御技術を確立する。そして、故意に表面を荒らすことで、表面ラフネスやボディの不純物濃度とチャネル移動度の関係を明確にすることで、MOSFETの特性向上を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リンドープn型ダイヤモンドボディを用いた反転層MOSFETにおいて、ボディのリン濃度を変化させたときの表面ラフネスやチャネル移動度への影響を明らかにし、APLにまとめた。さらなる表面平坦化を目指し、窒素ドープn型ダイヤモンドボディの窒素濃度制御技術開発を行った。その結果、窒素濃度を1017 ~ 1021 cm-3の範囲で制御する技術を確立した。一方で、1015 ~ 1017 cm-3の窒素濃度も必要であるため、今後の課題である。 また、MOSFETに用いるダイヤモンド(111)面においては、窒素不純物と同時にほぼ同量の水素不純物が入る問題が生じた。水素不純物はドナー不純物を不活性化させる可能性が指摘されており、同様の問題が考えられた。そこで、成長条件を見直し、より高品質なダイヤモンド膜の成長が可能な二次元方向のみに成長するラテラル成長を導入することで、この問題を解決できた。一方で、新たな条件で窒素濃度制御技術を確立する必要が出てきたため、予定よりやや遅れているが、成果としては十分出ており、今後の研究は予定通り推進できると見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
窒素ドープn型ダイヤモンドの成長に用いるガスの精製器を導入することができたため、その立ち上げを行うとともに、さらなる窒素濃度の低濃度化制御技術を確立する。そして、故意に表面を荒らすことで、表面ラフネスやボディの不純物濃度とチャネル移動度の関係を明確にすることで、MOSFETの特性向上を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスにより、3月に予定していた国際会議参加がキャンセルになったことと、基板の納品が1月~3月であったが、製作スタッフが辞めてしまったこととコロナウィルスで工場が止まってしまい、納品が次年度にずれ込んだため。
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