研究課題/領域番号 |
19K15046
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
陳 伝とう 大阪大学, 産業科学研究所, 特任准教授(常勤) (50791703)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アルミシート接合 / ダイアタッチ接合 / パワーモジュール / パワー半導体 / ヒーロク / 高温信頼性 |
研究実績の概要 |
1). Alシート両面にTi(0.1µm)/Ag (1µm)を順番にスパッタし、片面にTi/Ag をスパッタしたDBAとSiCダイの間にこのAlシートを挟んで200から350℃までの温度範囲で接合を実施し、せん断強度を測定した。3x3 mm2 SiCダイで300℃の接合の場合には、33.6MPaの接合強度を得られた。また、XRDでAlシートにTi/Ag をスパッタする前後の表面応力を分析し、スパッタ後のAlシート表面に残留応力は166 MPaであったことが分かった。加熱接合する際に表面残留応力を解除し、シート表面にAgヒッロクの成長により、強固な界面が接合できるとのメカニズムも解明した。本研究で得られた結果は、Alシートダイアタッチ接合がWBG電子デバイスの新たな接合材料及び技術として良好なものであることを示している。また、Al張り基板はAl材のソフトさから応力緩和能力に優れるので有力であるし、中間層としても応力緩和の効果が大きく期待でき、Alシートを利用するモジュール構造の設計および応用にも大きく期待される。 2).スパッタAgとAg界面は広い面積でもほぼ隙間なく接合でき,300℃の接合では、界面接合率が90%以上であった。接合構造の高温信頼性も評価し、高温250℃ 500時間に放置しても、接合強度は32.1MPaに維持した。走査型電子顕微鏡(SEM)の接合構造の断面観察により、Alシートでの接合構造は高温250℃ 500時間に放置しても、金属間の拡散が見えなく、金属間化合物も生じなかった。250℃までの厳しい温度試験に耐えることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画で最終的にはAlシートのダイアタッチ接合構造の強度を30MPaに設定した。今回は33.6MPaの接合強度を得られたため、当初の計画より早めに接合強度との目標を達成できた。また、ステージゲートにおいて2020年度は耐熱温度の上限200℃を設定し、亀裂の進展および劣化原因を分析し、最終年度には、250℃までのSiC高温動作を維持するまでに引き上げ、厳しい内部応力が発生する状態で信頼性を評価するとの計画であった。最終年度には、高温250℃で1000時間放置後の接合強度は30MPaを確保するとの目標を設定したが、今回は250℃までの接合構造の高温動作を実施し、500時間放置しても接合強度が32.1MPaに維持したため、目標がほぼ達成できた。今回の研究とおよび得られた結果が世界的に有名な雑誌"Scientific Reports"に掲載されたため、当初の計画より早かった。
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今後の研究の推進方策 |
1). Alシート両面のスパッタTi/Ag の膜厚は接合強度に与える影響を調査する。また、実用化に近い電解Ni/Ag メッキプロセスでAlシート両面に成膜し、接合強度を調査する。 2). Alシートより熱伝導性と電気特性が優れるCuシートをダイアタッチ接合材料として実験する。両面にTi/Ag、またはAgだけにスパッタし、片面にTi/Ag をスパッタしたDBCとSiCダイの間にこのCuシートを挟んで200から350℃までの温度範囲で接合を実施し、せん断強度を測定する。界面接合率とまた、高温250℃放置信頼性試験と-50~250℃の熱衝撃試験を実施する。 3). 5x5 mm2 SiCダイで大面積接合を実施する。また、今まで得られた接合結果と比較し、接合強度が接合面積との寸法効果を評価する。大面積接合構造の高温250℃放置信頼性試験と-50~250℃の熱衝撃試験を実施する。1000回温度衝撃試験サイクル後のせん断強度20MPaを目指して、さらに高強度のCuシート接合技術を開発する。 4).5x5 mm2 SiCの大面積接合構造における、高融点はんだ接合、Ag, Cuペースト焼結接合技術と比較し、耐熱・放熱パフォーマンスおよび導電性と高温信頼性との優位性を証明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
SiC大面積チップ、DBA,DBCの基板などの物品費が必要(500,000円);国内と国際に発表する旅費が必要(300,000円; 高温放置信頼性と熱衝撃試験のための装置維持費(200,000円); Ti/Ag成膜に必要な消耗品(200,000円);雑誌など掲載料金(200,000円)
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