有機半導体トランジスタの実用化にはキャリア移動度の向上が必要である。キャリア移動度を低下させている要因の一つに有機薄膜内の結晶粒界で起こるキャリア散乱があり、結晶粒界が少ない、質の高い有機薄膜を作製するプロセス技術の開発が必要である。特に有機半導体トランジスタにおいては、キャリアがゲート絶縁膜の界面近傍で輸送するので、移動度を向上させるには、界面近傍の結晶性を改善することが重要である。界面近傍の結晶性の評価は、ゲート絶縁膜に接触している部分のみ有機薄膜を製膜し、結晶の評価を行うことで、デバイスの性能と薄膜の結晶性の関係を詳細に明らかにすることができる。しかし、極薄膜となる故、可視性が大変乏しく、通常の光学顕微鏡による観察では、薄膜の存在さえ確認するのが困難である。そこで、基板内で起こる光学的な干渉を利用し、一般的な光学顕微鏡を用いて、大気圧下で簡便に単分子薄膜有機薄膜の結晶性を顕微評価する手法を開発した。 前年までに確立した真空蒸着法により単分子有機薄膜作成する技術を用いて、熱酸化膜付きのシリコン基板上に十字の形をした二次元核を製膜し、光学顕微鏡で観察を行った。光学顕微鏡にナローパスフィルターとポラライザーを挿入し観察すると、有機薄膜の光学異方性を反映し、十字の形とポラライザーの透過軸の角度関係により、結晶の色が異なる様子が観察される。この二次元核の色の違いから結晶方位を定めることができることを明らかにした。さらに、ポラライザーに加えて、アナライザーも挿入し、クロスニコル観察を行った。通常のポラライザーとアナライザーの透過軸の角度を垂直にした観察から、わずかにその角度ずらすことにより、結晶方位の違いを高いコントラストで可視化できることも明らかにした。すなわち、結晶粒界を大きな色の違いとして、簡便に可視化する技術として利用することができる。
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