研究課題/領域番号 |
19K15054
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
高 磊 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (40650429)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | SiN導波路 / 液体原料CVD / グラフェン / 非線形光学素子 / シリコンフォトニクス |
研究実績の概要 |
長さや周波数,時間の計量および標準策定に貢献する光コム技術の普及をめざし,独創的な超高非線形導波路による高効率光コム発生源の基礎技術の構築を目標とする.2次元層状物質であるグラフェンは桁違いに大きい3次非線形光学効果(n2:Si比>10^4)を有する一方,周囲の材料による励起光の非線形吸収や伝搬モードとの重なり制限を含む課題があった.本研究では光伝搬モードを形成する材料を根本的に改め,液体原料による低温(< 100℃)のSiN再成長技術を開拓する.続いて,グラフェン埋込型SiN導波路を具現化することで,励起光強度を抑え(同表層装荷型のSi導波路比),光増幅器を不要とする世界最小エネルギー水準の光コム発生器の実現をめざす. 初年度の研究課題として,液体原料によるSiN低温成長導波路の光吸収低減を進めた.LSCVD成膜条件の試行錯誤を経て,広帯域角度分解分光エリプソにより線形光学定数を把握すると共に,水素前方散乱/ラザフォード後方散乱(HFS/RBS)およびフーリエ赤外吸収分光(FT-IR)による材料物性分析を行ったほか,光導波路加工の後にはSLD光源による各種損失を評価した.LSCVD-SiN導波路(単一モード用,無グラフェン集積)の伝搬・結合損失の達成目標はそれぞれ2 dB/cm/1.5 dB/facetと定めていたところ,初年度終了時点で0.5-1.0 dB/cm/<1.0 dB/facetをそれぞれ達成した.当初の計画に沿って対外発表を行い,学術論文(J. Appl. Phys)が採録された他,複数の国際学会にて口頭発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の主目標である,SiN低温再成長技術およびグラフェン埋込技術に関する要素技術開発は初年度中にほぼ完了した.また,学術論文や国際学会発表を中心とする対外発表を進めており,当初の計画以上に進展している.次年度は非線形素子設計,および作製した素子の光学評価を中心に進める.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として,グラフェン埋込SiN導波路の構造検討を検討したのち,加工プロセスを進める.平坦化研磨やSiN低温再成長技術を駆使するほか,グラフェンへ欠陥を及ぼさない成膜温度やプラズマ条件を探索する.既に予備実験として,Al2O3保護層形成を併用することで,プラズマ暴露によるグラフェンへのダメージ抑制を実現出来ている.現在,素子化へむけて初期試作が進行しており,順次,光学評価を進める予定である.光学評価では,グラフェン埋込構造による光モード重なり効率の向上を先行して確認するほか,4光波混合やSC光発生を含む非線形光学効果の各現象を評価することで,光コム発生器実現へ向けた検討を行う.
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