研究課題/領域番号 |
19K15055
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
渥美 裕樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (30738068)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シリコンフォトニクス / 光ピンセット |
研究実績の概要 |
本研究ではシリコンフォトニクス技術を利用した新奇的な光ピンセット集積チップの開発に取り組んでいる。シリコンフォトニクスは、既存CMOS技術とのプロセス親和性、高密度集積性に優れており、小型・高機能・高性能な光電子集積システムを安価に大量生産できる。実施者は近年、イオン注入プロセスを用いてシリコン導波路をチップ表面に湾曲加工した新奇的な通信用光結合器を提案実証しており、本技術の応用により高性能な光ピンセットデバイスの実現を図る。 本年度は、溶媒(水etc.)への集光スポットを実現すべく窒化シリコンレンズの設計及び、成膜プロセスの立ち上げを行った。これまで開発してきた通信用デバイスでは空気中での集光であったため、屈折率の小さいシリカをレンズ材料としてきた。一方で、本デバイスではシリコンと溶媒に対して中間的な屈折率である窒化シリコンを採用することで、溶媒中でもレンズ効果を発揮することが可能となる。まずは三次元有限差分時間領域(FDTD)法により光フィールド分布の計算を行った。シリコン逆テーパからのエバネッセント光を窒化シリコン内でマルチモード干渉させることで、溶媒内に集光点が形成される結果が得られた。また、窒化シリコンの膜厚およびシリコン逆テーパの長さを適宜調整することでその干渉状況を制御することができ、焦点距離などの自由度が向上する結果が得られた。 次に、液体ソースを用いたPECVD装置によりシリコン逆テーパ上に窒化シリコンレンズ構造がクラック等の欠陥なく形成可能であることを実験的に確認した。本年度得られた成果は、次年度以降に行うデバイス実証にむけて大きく前進させるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、本デバイスのコア技術である窒化シリコンを用いたレンズ構造の数値解析、および作製プロセス開発が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、実際にデバイス試作を行い、光ピンセットとしての動作検証を行う。 また必要に応じて測定評価系の改造組み立てを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では測定評価系の立ち上げに必要な物品を計上していたが、来年度以降に試作するデバイスに合わせて設計を行う必要がでてきたため繰り越しを行った。また、他の研究予算との兼ね合いで本年度の支出減調整が必要となった。
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