今年度は昨年度までに進めてきた作製プロセスを更に発展させて、窒化ニオブジョセフソン接合を用いた集積回路の作製を主に試みた。Si基板上にTiNバッファ層を用いることでNbNをエピタキシャル成長させることが可能であるが、このプロセス自体に時間を要するため、まずは簡略化させてMgO基板上に窒化ニオブ集積回路の作製を行った。設計したチップサイズは5 mm×5 mmとしていて、回路作製に必要なジョセフソン接合の各パラメータ、配線インダクタンスを始めとして、入出力インターフェース回路、層間リーク等のプロセスをチェックするためのパターンなどを1チップ内に設計した。このチップを評価しようとしたが、信号線を取り出すためのコンタクトパッドが全てチップ内のグランドプレーンにショートしていることが分かった。コンタクトパッドのグランドプレーンへのショートについては、層間絶縁層の膜厚を厚くしたり、エッチング時間等、プロセスを調整しながら進めていたが、依然として解決せずその原因も特定できなかった。 原因の一つとして考えられたのが作製プロセスにおいて段差の部分での層間リークであったため、その段差による影響を少なくするために完全平坦化を導入した。このプロセスでは回路パラメータが変わることが予想されたため、MgO基板ではなくSi基板上にTiNバッファ層を堆積させた状態で完全平坦化プロセスを導入した窒化ニオブ集積回路の作製を試みた。こちらについても位置分解能は0.5 μmで作製することができた。しかしながら、こちらのプロセスでもコンタクトパッドとグランドプレーンへのショートがあり、回路パラメータの抽出までに至らなかった。 これらのことから考案したプロセスの中で構造上または設計上でショートしやすい箇所があることが考えられる。安定した窒化ニオブ集積回路にはこの原因を早期に特定し、フィードバックすることが必要である。
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