研究課題/領域番号 |
19K15062
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
金澤 健 北海学園大学, 工学部, 講師 (80823773)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 凍害 / 鉄筋コンクリート部材 / 極限解析 / せん断耐力 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,凍害を受けた既設RC構造物に対して,凍害深さを耐力照査指標として確立することを目的としている。 初年度である2019年度は,極限解析の枠組みの中で,RCはり部材のせん断耐力に対し,凍害深さの影響を考慮可能な力学モデルを構築した。このモデルの特徴は,限定された実験結果の回帰式等にほぼ頼ることなく耐力評価を可能にした点にある。既往の研究成果の中から,凍結融解試験後にせん断破壊を呈したRCはり41体に対して,この力学モデルが誤差20%程度で実験結果を再現可能であることを確認した。広範な部材諸元に対する適用性や,軸力の影響を考慮できない点などに改善の余地はあるものの,点検等で凍害深さが取得できれば,それを直接せん断耐力に結びつけることができる。 さらに,凍害が顕著な供用中のRC橋脚に対して,構築した力学モデルの適用を試みた。対象橋梁は,著しい凍害が原因で撤去されることが決定したものである。過去に2度詳細点検が行われており,点検時に取得した凍害深さや,劣化域コンクリートの圧縮強度・弾性係数を入力して耐力評価を行った。実構造物を破壊に至らしめることはできず,結果の妥当性は評価できないものの,構築した力学モデルは,耐力に及ぼす凍害深さの影響を定量的に評価可能であることを確認した。 このような橋脚の耐力を実験室で再現できるよう,静的水平載荷試験装置を導入した。初年度は予備試験を行い,次年度に実験的知見の蓄積ができるよう準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
凍害深さを考慮できる力学モデルを構築し,研究最終年度の目標であった実構造物への適用も試行することができたため,予想よりも順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
凍害を受けたRC部材の実験的知見の不足を補うため,初年度に導入した静的水平載荷試験装置を利用した正負交番載荷試験を行う。また,構築した力学モデルは,軸力や軸方向筋の貢献を評価できないため,これらを考慮できるよう一般化を図る。さらに,解析予定の実構造物に対して現場調査を行い,前回点検時(2014年)からの劣化の進行度を把握する。
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次年度使用額が生じた理由 |
載荷試験装置が予想より安価で導入できたため,若干の繰越が生じた。2020年度は,主として実験消耗品と解析用ワークステーションの購入に充当する予定である。
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