研究課題
研究計画の最終年度にあたる本年は,極限解析の上界定理を用いて,凍害による材料劣化が生じたRC棒部材に対し,実験結果の回帰式等を用いず,軸力と終局モーメントの相関曲線を解析的に得られる力学モデルを構築した.日本コンクリート工学会北海道支部において立ち上げた「極限解析による劣化RC部材の耐力評価に関する研究委員会」で,産・官の技術者と協働し,社会的実装をより意識した形の成果を発表することができた.構築したモデルは,既往のせん断解析モデルと同様,実構造物のコア供試体から得た劣化深度に基づいて,劣化分布を劣化域/非劣化域のように粗視化することで,劣化域の耐力への貢献を内力仕事の形で定量的に評価することができる.凍結融解試験後に曲げ破壊を生じた21体の実験結果との比較により,構築したモデルが平均で±5%の算定精度を有していることを確認した.また,極限解析では考慮することのできない付着劣化に対する誤差を検証し,それが±20%程度であることを確認した.さらに,北海道で53年間供用され,著しい劣化により撤去された既設RC床版から切り出したはり部材の曲げ解析を行い,実験結果と比較することで,劣化深度を指標とした力学的合理性のある健全度評価の可能性を示した.この成果により,凍害を受けたRC棒部材の曲げ・せん断耐力の双方に関して,劣化深度を考慮した解析解を得ることができた.したがって,点検で容易に取得可能なコア供試体を利用して,凍害を受けた構造物に対する力学的合理性のある健全度評価が可能となった.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件)
Journal of Advanced Concrete Technology
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10.3151/jact.19.335