高強度コンクリート二次製品の製造に用いられている180℃-1MPaのオートクレーブ養生(以下,AC養生)は,環境負荷が高いことが従来から課題であった。そこで養生温度を30℃低温化した150℃-0.5MPaの条件下で,従来法とほぼ同等の強度発現性を有する養生技術を提案した。この技術の特筆すべき点は、熱養生前に実施する十分な前置き養生時間の確保とシリカフューム(以下,SF)の添加である。対象としている地中杭等の製造時においては,W/Cを下げる目的として遠心成形を実施するため,SF混和に伴う流動性の向上によって,セメントの水和反応に必要な水まで脱水させてしまう可能性が考えられた。そこで,保水性材料であるメチルセルロースを混和し,水和反応に必要な水分量をコンクリート内に確保させると同時に,スラッジの発生量の低減,ならびに強度発現性に着目した実験を行った。 実験は,まずモルタル硬化体を使用し,SFの添加率ならびにメチルセルロースの添加率を変化させた場合の強度発現性およびフロー値を検討した。その結果,SFの添加率2.5%,メチルセルロースの添加率0.01%の場合において,AC養生後の圧縮強度が113.7N/mm2と最も高い結果となった。次に,W/C=31.2%のコンクリート配合を用いた遠心成形による影響を検討した。その結果,SFの添加率の増加に比例して発生するスラッジ量の増加が顕著であったが,メチルセル―スによってこれを抑制し,スラッジ密度も低下させる効果が認められた。一方で,遠心成形後の強度発現性は,蒸気養生後まではモルタル硬化体と同様の傾向であったのに対し,AC養生後においても一定の効果は得られたものの,圧縮強度のばらつきが大きい結果となった。これはメチルセル―スが分解前に高温履歴を受けたことが影響していると推察したが,本検討範囲ではこれを明らかにすることができなかった。
|