非破壊により,コンクリートの水分量を測定することで表面塩分量を推定する手法の構築のために,本研究では,コンクリート中の自由塩分が水分量の変化に及ぼす影響の把握とマルチスペクトル法によるコンクリート表面の含水率の測定手法の構築をする. 当該年度は,前年度の検討で確認されたコンクリート中の自由塩分の存在による水分量の増加が本研究で用いる計算モデルで表現できるか検討した.さらに,近赤外線分光法により推定された水分量と本研究で用いる計算モデルの水分量を比較することで,近赤外線分光法により推定した水分量より,コンクリート中の自由塩分の存在を感知することができるか検討した. コンクリート中の自由塩分の存在による水分量の増加は,塩分の存在による液状水の物性値の変化を考慮することで本研究で用いる計算モデルにより,セメントペースト基準の水分量で±35kg/m3の精度で推定できることを明らかにした.近赤外線分光法により,推定された水分量と,本研究で構築された計算モデルによる水分量の比較より,両者は正の相関を有しており,セメントペースト基準の水分量で±60kg/m3の精度であることが確認された. 以上のことから,自由塩分の存在による水分量の増加が顕著になる高湿度環境下かつコンクリートの細孔構造が同様であれば,近赤外線分光法により推定された水分量によりコンクリート中の自由塩分量の大小を定性的に推定できる可能性があることを明らかにした.
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