研究課題/領域番号 |
19K15069
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
齊藤 剛彦 北見工業大学, 工学部, 助教 (70646984)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高減衰ゴム支承 / 温度依存性 / ハイブリッド実験 |
研究実績の概要 |
2019年度は低温環境下実験可能な実験システムを構築した.具体的には,既存の低温実験室に整備している載荷装置を,ハイブリッド実験システムと接続した.実験に用いる橋梁のモデルは参考文献において試設計され,多くの地震応答解析の研究で用いられているモデルを使用し,システムの計算部分に組み込んだ.この橋梁モデルは地震動によって被害を受ける橋脚基部の非線形履歴特性を考慮している. 以上の実験システムにより,+23℃,-20℃,-30℃の環境下で実験した.その結果,地震動による加振が進むにつれて支承の履歴曲線が変化することを応答解析に取り込むことができ,温度による上部構造の応答変位,支承や橋脚基部の履歴曲線の違いを確認できた.ゴム支承の履歴曲線の最大変位は剛性が大きくなる低温でも明確に小さくなるわけではなく,大きな履歴曲線を一度描く,従来の地震応答解析から想定される結果とは異なるものとなった.また,橋脚基部は非線形な履歴曲線を示し,低温環境下において応答塑性率が大きくなる結果が得られた. しかし,現状の実験システムはリアルタイム実験ではなく,30秒の実験におおよそ40分かかる.リアルタイム化に向けて,実験の1ステップにかかる時間はシステム内で計算にかかる時間と,載荷装置が作動する時間に分けることができる.検討の結果,載荷装置が作動するほうがより多く時間がかかることがわかった.さらに,載荷装置が作動する際の速度を制御していないため,ゴム支承の力学的特性が持つ速度依存性の影響を受けることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験システムを構築し,低温環境下でも実験できたため,温度や入力地震波だけでなく,ゴム支承の種類や橋梁のモデルなど,様々な実験条件を考慮した研究ができるようになった. 現状の実験システムはゴム支承の速度依存性による応答結果への影響は避けられないが,この条件の下でも,温度やゴム種の違いを検討し,当初の目的であるゴム支承の温度依存性に着目した,低温環境下での免震橋梁の地震応答の解明につながると考え,上記の区分とした.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は温度,入力地震動,ゴム支承の種類,橋梁モデルを実験条件として,現状の実験システムで実験を行い,ゴム支承の温度依存性による地震応答への影響を検討する. システムのリアルタイム化の検討について,載荷装置の作動する時間は載荷装置のスペックによるものであり,改善するには載荷装置の改造が必要であるが,載荷装置の改造には相当な費用がかかる.そのため,ハイブリッド実験でのリアルタイム化は載荷装置の応答速度の影響で困難であるが,事前にハイブリッド実験を行い,その応答変位データを命令波形として載荷装置に入力することで,供試体をリアルタイムで載荷することができる.ただし,ここでも載荷装置の追随性の課題があるため,予備実験として載荷装置をスイープ波で加振して各振動数帯の応答の追随性を確認し,入力波形を補正する.これにより,ステップバイステップでの載荷とリアルタイム載荷による支承の履歴曲線への影響を検討する. また,システムの計算速度の向上についてはシステムのプログラムコードを修正して,GPU計算に対応させ計算時間短縮の効果を測定する.その一方で,既往の研究でよく用いられているデジタルシグナルプロセッサーによるシステムについても検討する. 以上のように,現状のシステムで実験しゴム支承の温度依存性による地震応答への影響を検討するとともに,応答速度の影響,システムのリアルタイム化の検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の交付額に基づき計画的に使用したが,今年度の主な目的である実験システム構築に際し,既存の備品を活用することで整備できたため,次年度使用額が生じた.次年度において,システムの改善のための備品や,本実験を行うための備品の購入などに使用する計画である.
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