前年度に引き続き,橋梁の加速度応答から通行車の重量および影響線を推定するシステムの改良を進めた.とくに路線バスなど常時走行する車両を利用することで,B-WIMで必要な「影響線の推定と補正」を行うセルフキャリブレーション機能の構築を行った.複数台が連続的に走行するパターンではデータの分析区間が長くなるため,加速度の積分によるたわみ算出では誤差が大きくなることが課題であった.そこで今年度は,低周波における自己ノイズが小さい高精度加速度センサを利用することに加えて,多数の単純なFIRフィルタを並列に用いて,それぞれのフィルター処理後の振動波形から閾値によって車両が通過していない時間帯を検出し,その結果を統合することで,車両の入退出時間を高い精度で検出する方法を提案した.この方法によって,複数台が連続的に走行するパターンでも,車両と車両の間の1秒以下の時間も検出でき,分析区間を狭めることで積分精度を向上させた.また,多数の単純なフィルタを用いることから計算処理がウェーブレット変換などに比べて速く,かつ入退出時刻検出結果は閾値の設定に対してロバストであり,時間帯や交通量にあまり依存せず安定して検出が行えることを示した. また,昨年度の結果から,気温が主桁の影響線形状に与える影響をほとんど見られないことが示唆されたことから,詳細に計測を行ったある1日の計測データを用いて,重量推定の精度検証を行った.検証対象の試験車を用いて様々な走行パターンを設定して検証を行った結果,車両重量の推定誤差はB-WIM実用化の目標とされている5%以下をおおむね達成していることを確認した. 得られた研究成果については,国内外の学会発表のため査読付き論文を含めた論文投稿を行った.それらの多くはオンライン形式での開催ではあったものの研究発表を行い成果を公開した.
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