研究課題/領域番号 |
19K15077
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
丸山 泰蔵 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (90778177)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 弾性波 / 非線形超音波法 / 接触音響非線形性 / 高調波 / 分調波 / 境界要素法 / 調和バランス法 / H行列 |
研究実績の概要 |
令和2年度は,令和元年度までに開発を行った調和バランス-境界要素法にH行列法を適用し,その計算コスト効率化の検討を行った.調和バランス-境界要素法で扱う総未知数は,空間離散化による未知数と考慮する周波数の個数の積に比例する.また,最終的に帰着されるのは連立非線形方程式であり,適切な初期値が得られないためこれまでNumerical Continuation Method(NCM)によって方程式を数値的に解いてきた.そのため,未知数が増大すると,大規模な連立非線形方程式を解くこととなる.NCMによる求解プロセスでは,Newton法を用いる部分に要する計算コストが支配的であるため,そのNewton法におけるJacobi行列の逆を求める処理にH行列法を適用した.H行列法はLU分解等の直接法によって逆行列を求めることが可能な高速化アルゴリズムであり,Jacobi行列の性質が良くない調和バランス-境界要素法には適していると考えられたため,H行列法を選定した. H行列法では階層構造行列を作成し,その階層構造を利用した低ランク近似,行列演算を行う.調和バランス-境界要素法にH行列法を適用することを考慮すると,空間方向,周波数方向について階層構造の作成と低ランク近似を行う必要がある.通常の境界要素法に対するH行列法に倣い,セル構造を生成して空間に関する階層構造を作成した.周波数方向の成分は,異なる周波数間の成分同士は非線形性を除いて独立であるため,低ランク近似ができないことが予想された.そこで行列の並べ方による計算コストの比較を行い階層行列構造での扱いを検討した.空間成分ごとの行列配置と周波数成分ごとの行列配置のそれぞれの場合で数値計算を実施して計算コストを比較した.結果として,空間成分ごとの行列配置は必要メモリ量の増大があるものの,空間未知数増大に対して効果的であることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画全体では,調和バランス-境界要素法の2次元半無限弾性体,3次元問題への拡張,及び計算効率向上を3年で実施することを予定している.初年度である令和元年度に調和バランス-境界要素法の2次元半無限弾性体への拡張が完了している.2年目の令和2年度ではH行列法の適用による解法の高速化を実施し,その行列構造の検討を行った.そのため,概ね順調に進展していると考える.以下は,今年度に実施した内容である. H行列法を調和バランス-境界要素法に適用する際に空間方向,周波数方向について階層構造の作成と低ランク近似を行う必要がある.通常の境界要素法に対するH行列法に倣い,セル構造を生成して空間に関する階層構造を作成した.周波数方向については階層構造を用いる場合と用いない場合の比較を行った.①「空間成分で階層を生成し周波数成分ごとには階層を生成しない行列配置」と②「周波数成分ごとに階層を生成してその中でさらに空間成分で階層を生成する行列構造」のそれぞれの場合で数値計算を実施して計算コストを比較した.低ランク近似にはAdaptive Cross Approximation(ACA)を用いた.結果として,①の空間成分ごとの行列配置は必要メモリ量の増大があるものの,空間未知数増大に対して効果的であることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
現在,調和バランス-境界要素法の2次元半無限弾性体への拡張,及びH行列法の適用は完了している.しかしながら,H行列法の行列構造については検討の余地は残っている.そのため,今後は調和バランス-境界要素法の3次元問題への拡張とH行列法の行列構造のさらなる検討を行う予定である. H行列法の行列構造については,計算コストのさらなる低減のために周波数成分についてどのように配置するかを検討する.3次元問題への拡張については,まず,2次元問題で用いていた正則化された境界条件を3次元問題に拡張を行う.その後,3次元問題に対する調和バランス-境界要素法の定式化を行い,プログラムの実装を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により,旅費を使用しなかったが,成果報告のためのオンライン会議に必要な機器の購入を行った.そのため,利用経費が予定に対して若干変動した. テレワークによりプログラムコード作成を自宅で行うことも予想されるため,効率よく実施するために必要な機器(ソフト等)を購入する予定である.
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