最終年度までの研究成果として、環境的要因である乾燥収縮に着目した鋼とコンクリートの付着性能に関する両端試験では14日、28日、56日、112日、168日と長期の乾燥収縮期間まで5種類の養生期間を設定し、付着破壊時の最大付着応力は乾燥収縮期間が長くなるにつれて、付着応力が徐々に低下し収束する傾向が得られた。さらに、乾燥収縮に着目した解析的研究では、熱膨張ひずみの理論を用いて熱膨張係数の調整で乾燥収縮ひずみを簡易的に表現することが可能であることを確認した。 次に、コンクリートの乾燥収縮によるひび割れから水分の浸透を想定しコンクリート内部に配筋された補強筋の腐食も環境的要因の1つとして考慮し、まずRC構造を対象に鉄筋の配筋間隔に着目して腐食した鉄筋がかぶりコンクリートのひび割れ性状に及ぼす影響について検討した。その結果、鉄筋径とかぶりが同じ状況で配筋間隔を変えた場合にコンクリートのひび割れ性状は大きく異なること、さらに熱膨張による鉄筋の腐食表現や異方性損傷によるコンクリートひび割れモデルを用いたFE解析より、コンクリートのひび割れ進展を定量的に把握可能であることを確認した。 最終年度の成果として、鉄筋間隔やかぶり厚の条件を数種類設定し,電食試験により腐食度合いを変えたRC構造と人工的な欠陥を有したRC構造に対し、かぶりコンクリートの引張載荷試験によるかぶりコンクリートの耐荷性能評価を実験的かつ解析的に実施することで、かぶりコンクリートのひび割れ情報とかぶりコンクリートの剥落危険性との相関関係を定量的に把握した。さらに、FEMによる補強筋に腐食を有したPBLのせん断耐荷性能評価を行い、腐食した配筋の位置や腐食度合いにより母材コンクリートの拘束効果が変化するため、せん断耐荷力が低下する定性的な傾向が得られた。
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