研究課題/領域番号 |
19K15082
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中村 謙吾 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (30757589)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 土壌 / 卓越流路 / 可視化 / 孔隙構造 |
研究実績の概要 |
土壌における流体流動現象の理解は、環境工学、農学、防災などの分野において重要な課題である。土砂災害の発生メカニズムや土壌汚染における汚染物質の分布は、土壌内の孔隙水の移動が寄与している。その移動現象は、土壌中の流体流動現象も透水係数により表現され、そのパラメータの推定に関する研究も報告される。 しかし、実験室レベルの土壌中の透水性予測は、実環境の透水性を容易に再現することができない。これは、土壌の粒度や地盤内の割れ目、動植物の影響による孔隙分布の偏りによって、大きな流路の偏りが生じるためである。また、土質試験では土壌を均質なものとして扱うことから、実環境で生じる可能性のある不均質な孔隙分布や流路の偏りを実験室で再現することは不可能である。 土壌中に形成される孔隙分布がどのような形状を有しており、どのような流れが現象として生じるか不明確であるためである。このことから、土壌中の不均一な孔隙構造を評価することは困難であり、実環境における流体流動特性は解明されていない。実環境で土壌中に形成された孔隙構造と間隙水の流体流動を可視化し、土壌コア内に形成される孔隙や流路のネットワークを多角的に観察することで、土壌の持つ要素の中で何が流体流動プロセスに寄与しているか考察していく必要がある。 本研究では、室内実験から土壌内の孔隙分布をX線CTを用いて可視化し、部分体積効果を用いて土壌中に形成される二相(固相 vs 気相・液相)のデジタル土壌コアをモデリングすることで、土壌内の流路を流体流動モデルから透水係数などのパラメータの推定を行う。また、様々な環境の土壌コアを採取し、室内試験の結果とそのパラメータの比較を行うことで、実環境の土壌中の孔隙構造と流体流動プロセスの真値について考察していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は、X線CTを用いた土壌コアの3次元モデルに関して国際誌に投稿したがリジェクトされた。査読のコメントより、学術的な方向性に関して問題がないが、X線CTを用いた可視化だけでは、新規性がないと記載された。現在は、カラム試験より得られた土壌からの溶出メカニズムと化した土壌コアの関係に関する論文を執筆している最中であり、査読者のコメントを反映した論文を投稿する予定である。 また、想定以下で予算を執行中である。これは、2019年度末に実施予定であった実験に関する購入の消耗品やその実験に関する論文の作製及び英文校閲の予定が遅れたためである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、実験と解析を同時、または個別に行っている。本研究の中心的な実験であり、2019年度より実施している土壌のカラム試験の結果が出てきたため、2020年度中旬には、実験ベースの研究から、解析ベースの研究に移行する予定である。2019年度の業務実績より一部解析(土壌コアの可視化)は、十分な業績を得ている。今後は、実環境の土壌中の孔隙構造と流体流動プロセスに焦点を当てた解析を実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた装置及びそれに伴う消耗品の購入を別の予算で実施する必要が生じた。2020年度は、別の予算で購入した装置及び消耗品を使用せずに、本予算で購入し実験に使用する予定である。そこで、2019年度に繰り越した予算を物品費で装置や消耗品の購入に使用する予定である。
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