土壌における流体流動現象の理解は、環境工学、農学、防災などの分野において重要な課題である。土砂災害の発生メカニズムや土壌汚染における汚染物質の移流拡散は、土壌内の間隙水の移動が寄与している。その移動性は、透水係数により表現され、透水係数の推定に関する研究も報告されている。 しかし、実験室レベルの土壌中の透水性予測は、実環境の透水性を容易に再現することができない。土壌の粒度や地盤内の割れ目、動植物の影響による孔隙分布の偏りによって、流路の偏りが生じるためである。よって、土壌中の不均一な孔隙構造を評価することは困難であるため、実環境における流体流動特性を解明されていない。 本研究では、土壌の不均一性にも対応し得る流路形成モデルを確立することで、実環境(攪乱土壌、不攪乱土壌)の孔隙構造を可視化し、土壌内の流路を流体流動シミュレーションから透水性の予測を行う。その上で、真値となる実環境での透水性の評価し、土壌中の孔隙構造と流体流動特性の支配的要因を考察していく。 本研究で実施した土壌中の流れに関する各種試験結果から、土壌中の流路に応じて卓越流路が形成される。また、この形成された卓越流路の形状に応じて土壌中の成分の溶出プロセスが大きく変化することが示唆された。
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