研究課題/領域番号 |
19K15083
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
榎本 忠夫 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (70727180)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 泥岩 / スレーキング / 三軸液状化試験 / せん断剛性 / 骨格構造の劣化メカニズム |
研究実績の概要 |
盛土に利用された泥岩は、乾燥と湿潤の長期的繰返し作用によって粒子が徐々に細粒化し(スレーキング)、生じた局所的な緩みが盛土内の健全部の骨格をも劣化させ地震による被害を引き起こし得る。また、泥岩のスレーキングにより生じた砂や細粒分が液状化被害のトリガーにもなり得る。このような泥岩を含んだ盛土の耐震性を正確に評価するためには、スレーキングの進行度と泥岩含有率に依存する骨格構造の劣化メカニズムや、その劣化が土の動的挙動に及ぼす影響を明らかにする必要がある。そこで、本研究では、室内土質試験によりこれらを定量的に評価するとともに、泥岩を含む盛土の骨格構造の健全度を評価できる指標を検討する。 2019年度は2系統の実験を行った。シリーズ1では、泥岩のスレーキングが相当に進行し非塑性細粒分と化した状態を想定し、細粒分含有率Fcが0、20、30、45%になるようにDLクレーを豊浦砂に混合した試料を用いた。湿潤締固め法により作製した締固め度95%の供試体を飽和させ、有効拘束圧100kPaの下で圧密した後、三軸液状化試験を行った。その結果、液状化強度は細粒分含有率の増加とともに減少する一方で、微小ひずみにおけるせん断剛性はこれとは異なる傾向が見られた。シリーズ2では、珪砂3号と最大粒径3mm程度の泥岩粒子を混合し、泥岩含有率(土試料の全重量に対する泥岩粒子の重量の割合)を0、6、12%に変化させた3種類の試料を用いた。乾燥密度一定の条件下で締固め法により供試体を作製し飽和化を図った後、有効拘束圧100kPaの下で圧密し三軸液状化試験を行った。その結果、泥岩含有率が高くなるにつれて過剰間隙水圧比が0.95に達するまでの繰返し回数が少なくなることが分かった。この強度低下のメカニズムとして、泥岩粒子が水を含むことで極端に弱くなり、荷重伝達の役割を果たすことができなくなることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
泥岩のスレーキングにより生じた細粒分が液状化被害のトリガーになり得るか否かを調査するため、スレーキングが相当に進行し非塑性細粒分と化した状態を想定し、細粒分含有率を変化させた砂質土に対して三軸液状化試験を行うことができた。その結果、液状化強度は細粒分含有率の増加とともに減少したことから、泥岩のスレーキングが相当に進行し非塑性細粒分と化した場合、少なくとも細粒分含有率40%程度までは細粒分含有率の増加に伴って液状化被害を引き起こしやすくなる可能性があることが浮き彫りになった。 また、泥岩のスレーキングによって引き起こされる局所的な緩みが土要素の動的力学特性に及ぼす影響を解明するため、当初の計画どおり、泥岩含有率を変化させた供試体を用いた三軸液状化試験を行うことができた。その結果、泥岩含有率がわずか6%、12%であっても砂の液状化強度の低下に及ぼす影響は大きく、泥岩粒子が水を含むことで極端に弱くなり荷重伝達機能を果たせなくなることが強度低下につながっている可能性がある(泥岩粒子を間隙と見なしても差し支えない)という学術的価値の高い成果を得ることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の実験的研究により、泥岩含有率が高くなるにつれて砂の液状化強度が低下する現象は、泥岩粒子が水を含むことで極端に弱体化し荷重の伝達ができなくなることに起因している可能性が浮かび上がった。このような泥岩粒子を含む土の骨格構造の劣化は、スレーキングを引き起こす泥岩特有のものであると考えられ、泥岩粒子の細粒化とともに非常に大きな工学的問題の1つになり得る。 2020年度は、当初の計画通り、2019年度と同様に砂質土と泥岩粒子を混合した土試料を用いて、泥岩含有率をさらに増加させた場合の三軸液状化試験を行っていく。また、2019年度に仮説を立てた上記の骨格構造の劣化メカニズムについて検証を行うことが必要不可欠である。そこで、通水量を調整し泥岩粒子内の水分量を変化させた供試体と通水を行わず乾燥状態の供試体に対して排水三軸圧縮試験を新たに実施し、得られた強度変形特性や微小ひずみ領域における剛性の比較を行うことで当該メカニズムの妥当性を検証することとする。さらに、使用試料に乾湿繰返し作用等を与えることで疑似的に泥岩粒子のスレーキングや脆弱化を進行させた上で、2019年度と同様な三軸液状化試験を行っていくことで、スレーキングの進行度にも依存すると考えられる骨格構造の劣化メカニズムを明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は111,831円である。2019年度の実験計画を遂行していくにあたって必要であり購入する予定であった物品の一部について、手間はかかるものの、自身の研究室にある既存の物品を改造し充当する方が本研究費をより効率的に使用できると判断した。その結果、上記の次年度使用額が発生したものである。2020年度は、「今後の研究の推進方策」に記載したように、2019年度の実験結果を踏まえて当初計画にはなかった新たな実験を一部行っていく予定であり、その遂行にあたって必要となる物品の購入に充てる。
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