研究課題/領域番号 |
19K15087
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤村 康生 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20738223)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 鋼管矢板基礎 / 水平抵抗 / 継手 / 遠心模型実験 / 骨組み解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,鋼管矢板基礎の水平抵抗に及ぼす継手の影響を遠心模型実験により把握し,それを適切に表現可能なシミュレーターを開発することである.そこで本研究では,小型の鋼管矢板基礎模型を作製し,1g場で継手の各種要素試験を実施した上で,遠心場で鋼管矢板基礎全体の水平載荷試験を実施する.さらに,遠心実験の再現解析を通じて,同構造の設計に用いるシミュレーターを開発する.2020年度は特に下記の2点について研究を行った. 1. 遠心模型実験で使用する小型模型の継手試験: 2019年度に検討した接手構造を用いて,継手部の各種力学試験を実施した.その結果,接手部の充填剤として石膏を用いることで,鉛直せん断試験や圧縮・引張試験において,実構造と近い破壊モードを示すことを確認した.また,接手を矩形でモデル化することで本管部との接着を高めることができ,接手の幾何学的な特徴はそのままに,再現性の高い模型を作製することが可能であることを確認した. 2. 同構造の水平挙動を再現するシミュレーターによる遠心模型実験の予測解析: 有限要素法による解析手法を用いて,1. で検討した接手の特性を踏まえた予測解析を実施した.遠心模型実験では鋼管矢板基礎模型を載荷するジャッキの容量が問題になることから,鋼管部分の剛性をパラメータとして適切な模型の寸法,形状を確認した.さらに,実験に使用する地盤や土槽を用いた予備実験を実施し,遠心模型実験を実施する準備を整えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,小型の鋼管矢板基礎模型を作製し,1g場で継手の各種要素試験を実施した上で,遠心場で鋼管矢板基礎全体の水平載荷試験を実施する.さらに,遠心実験の再現解析を通じて,同構造の設計に用いるシミュレーターを開発する.2020年度は,「1. 遠心模型実験で使用する小型模型の継手試験」と「2. 同構造の水平挙動を再現するシミュレーターによる遠心模型実験の予測解析」について研究を行った.新型コロナウイルスの影響で大学内の活動レベルが制限されるなど,たびたび実験を中断せざるを得ない状況であったが,各種接手試験についてはよい成果を得ることができた.遠心実験についても実施予定であったが,上記の理由により予備試験と準備までにとどまった.一方でシミュレーターの開発については,シミュレーターを用いて接手の特性を考慮したうえで遠心実験の予備解析を実施するなど,一定の成果をあげることができた.したがって総合的には,研究は概ね順調に進捗していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
1. 遠心場における鋼管矢板基礎全体の水平載荷試験 実験ケースは,継手の挙動を段階的に把握していくことと併せて,事後に実施する数値解析モデルの構築に寄与するように設定する. はじめに,最も基本となるケースとして,鋼管1本の水平載荷試験を実施する.つぎに,継手を1つ有するモデルとして1×2(直列),2×1(並列)のケースを行う.継手の圧縮・引張り,鉛直せん断は直列方向,継手の水平せん断とねじれは並列方向のケースにおいて顕著であると考えられることから,その後は直列,並列ともに最大で鋼管5本(継手4か所)までケースを拡大する. 直列および並列の実験で基本的な挙動を確認した後,3×3,5×5の矩形基礎について実験を行う.現在の設計では,安全のため内部に存在する土(以後,内部土)の影響を考慮していないが,内部土により杭の水平抵抗が増加していることが考えられるため,5×5については内部土の有無についてもパラメータとする. 2. 鋼管矢板基礎の水平抵抗を評価可能なシミュレーターの開発 上記の遠心模型実験に対して再現解析を実施する.その際は,精緻なモデルと簡易なモデルの2種類で検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため,当初予定していた学会参加への旅費が全て不要となった.また,遠心実験に使用する費用も一部次年度に繰り越すこととなった.
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