地盤内に面的に広がるパイプラインは,液状化現象に伴う地盤の変状により甚大な被害を受ける。その被害パターンは多種多様であることから,従来の設計実務や対策手法が実態を正確に反映しているとは言えず,他の土木構造物に比較して耐震対策が遅れているのが現状である。本研究課題は,液状化発生時の被害パターンとして最も多いパイプラインの鉛直変位現象に焦点を当てたものであり,液状化後の地盤の体積圧縮に伴うパイプラインの沈下挙動も含めてその被害メカニズムを実験的に検証することを目的としたものである。 埋設パイプラインの変位挙動は地盤の拘束圧に依存するため,実物スケールの応力状態を再現可能な遠心力場において振動実験を実施した。令和2年度は,前年度に実施した遠心模型実験の実験条件を改善・拡張し,より圧縮性の高い地盤材料を用いた条件で実験を行った。幅510 mm,高さ230 mm,奥行き120 mmの剛土層を新規に製作し,比重の異なる2本の模型管(Φ20 mm)を十分な距離を空けて同じ埋設深で並列に埋設した。模型管には鉛直変位計測用ターゲットを固定し,鉛直変位を直接計測できるようにした。全ての実験は遠心加速度40g場で実施し,地下水位を変化させた実験では遠心力場で電磁弁を操作して自由排水により水位を調整した。電気式メカニカル振動台を用いて一次元水平振動を与え,液状化を発生させた。鉛直方向に密に配置した間隙水圧計と加速度計により,地盤の挙動を観測し,比重の異なる模型管の変位挙動との相互作用について検証した。
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