研究課題
本研究課題は,山間部等の表層斜面崩壊のソフト対策として,植物根が地盤の滑りによって受けたせん断力に反応する生体電位を読み取り,災害時に警告を発令する「表層崩壊バイオアラーム」に用いる生体電位閾値を見出すことが目的である.今年度は,植生を含む室内一面せん断試験を実施し,スギ,クヌギの根数 (せん断面の植生密度) が地盤のせん断強度に及ぼす影響を明らかにした.加えて,植生の茎,根,地上部との境界に塩化銀電極を取り付け,せん断試験中の生体電位を測定した.その結果,以下のような結果が得られた.1) 地盤の粘着力および内部摩擦角に関しては,直径5mm程度のスギ根系が 30cm×30cmに1本~4本存在すると,根系がない場合と比較してそれぞれ5.2~7.6kPa,3.9°~4.9°増加した.また,直径5mm程度のクヌギの根系が30cm×30cm に1本~4本存在すると,根系がない場合と比較してそれぞれ2.2 ~ 6.3kPa,2.4°~2.7°増加し,スギ根系の方がクヌギ根系よりも1.1~1.4倍程度補強効果が高いことが明らかとなった.2) スギ,クヌギの生体電位の出力値は,茎では正,根では負となり,最大せん断応力発現後は生体電位の波形に変化が表れた.根数が増加すると,生体電位波形が変化し値も減少する傾向にあった.3) せん断中のスギ,クヌギ根系の生体電位のフーリエ解析では,周波数4.2 ~ 6.6 Hz付近で大きな電位を示した.せん断中のクヌギ根系の生体電位は,周波数6.6 ~ 8.8 Hz付近で大きな電位を示した.茎に関しては,根数を1本から4本へ増加させた場合、卓越した電位の値は68.0 %~88.3 %低下した.上記の研究成果をとりまとめ,2019年度は,国内学会に3編,国内シンポジウムに1編,国際シンポジウムに1編の論文を投稿し,学会発表を行った.
2: おおむね順調に進展している
申請書に記した計画表の通り,2019年度は植生を含む室内一面せん断試験を実施し,上記「研究実績」の通りのデータを得ることができたため,おおむね計画通り順調に進展している.
申請書に記した計画表の通り,2019年度に得たデータを用いて,「根を含むばらつきを考慮した地盤のせん断強度評価式」の構築を行う.加えて,せん断破壊の前兆を捉えられるような生体電位の解析手法をフーリエ解析等を用いて検討する.屋外で生育している樹木に対して原位置で一面せん断試験を行い,室内試験との差異や,室内試験で取得したデータを原位置で適用する方法を検証する.
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
令和元年度土木学会西部支部 講演概要集
巻: 1 ページ: 319-320
Geotechnics for Sustainable Infrastructure Development, Lecture Notes in Civil Engineering
巻: 62 ページ: 1001-1006
https://doi.org/10.1007/978-981-15-2184-3_131
第54回地盤工学研究発表会 講演概要集
巻: 1 ページ: 1853-1854
令和元年度土木学会全国大会第74回年次学術講演会 講演概要集
巻: 1 ページ: III-201-III-202
第13回環境地盤工学シンポジウム 発表論文集
巻: 1 ページ: 405-408