上水道管等の地中埋設管の屈曲部では,スラスト力による埋設管の不安定化が懸念されることから,スラスト力防護対策が施される.本研究では,礫とジオテキスタイルで作製した蛇籠型受圧体を埋設管側部に設置するスラスト力防護対策を対象とし,本対策手法の確立に向けて,周囲の地盤が完全に液状化した状況下での埋設管および蛇籠型受圧体の地震時挙動,蛇籠型受圧体による変位抑制効果や水圧消散促進効果等について模型実験を通じて検討を行う. 過年度には,蛇籠型受圧体にスラスト力を載荷しながら周囲の地盤を液状化させる模型実験を行い,蛇籠型受圧体を設置することによる周辺地盤の過剰間隙水圧の上昇抑制効果や消散促進効果,異なるスラスト力条件における埋設管の変位抑制効果について明らかにした.令和3年度は蛇籠型受圧体の配置条件についてより詳細な検討を行うため,屈曲管と直管からなる埋設管模型を用いて模型実験を行った.蛇籠型受圧体はその重心位置が埋設管と同じ深度となるように設置した時に変位抑制効果が高まることが確認されているため,この条件は固定した上で,埋設管と蛇籠型受圧体の平面的な配置に着目したケースを設定した.蛇籠型受圧体をスラスト力の作用方向に直交するよう屈曲管外側に設置したケースと,屈曲管に接続した直管の側面に沿って設置するケースを比較したところ,同じスラスト力条件における両ケースの変位抑制効果はほぼ同等であることが明らかになった.また,屈曲管外側と直管側面の双方に蛇籠型受圧体を設置したケースでは,特に顕著な変位抑制効果が得られることが明らかになった.つまり,蛇籠型受圧体の配置を変化させることで,埋設管屈曲部に作用するスラスト力の大きさや埋設管の許容変位,施工条件等に対応可能であるといえる.
|