研究課題/領域番号 |
19K15091
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
石川 敬祐 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (00615057)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 液状化判定 / 地震波 / 不規則性 / 液状化強度 / 消散エネルギー |
研究実績の概要 |
本研究は,現行の液状化判定方法の高度化を目指し,南海トラフの巨大地震や首都圏などで想定される地震波荷重が液状化強度特性に及ぼす影響に関して実験的に解明し,地震波荷重のランダム性に関する補正係数を定量的に立証することを目的としている. 現行の液状化判定において用いられている“地震波荷重のランダム性に関する補正係数”を定量的に立証するために,マグニチュードや震央距離が地震波の波形形状どのような影響を与えているかを評価する必要がある.そこで,東日本大震災(Mw=9.0)時の東日本地域のK-NETやKiK-netで観測された地震動記録に対して,最大加速度,地震波の波形形状(等価繰返し回数)をパラメータとして,断層距離や微地形に係る特徴を分析した.さらに,現行の液状化判定手法による等価な繰返し回数に関する補正係数と観測波形から求められる同補正係数を比較検討した. 東日本大震災時の波形特性の特徴として,最大加速度は断層距離が遠くなるほど小さくなるといった明瞭な関係がある.一方,等価繰返し回数は震源域内で複数のすべり域が生じたことで地域によってその回数は大きく異なり,波群が明瞭に2つ確認された岩手県や福島県では波群が1つの東京低地に比べて,その波数は倍ほど多いことがわかった.また,同震災時の液状化履歴と波形特徴を比較すると,東京低地の自然地盤では同程度の最大加速度が作用した際に等価繰返し回数が多い地点の周辺で液状化が生じていることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,地震波荷重のランダム性に関する補正係数を定量的に求めることを目的としており,地震波荷重の特徴の評価が重要となる.したがって,様々な地震波荷重,様々な地盤材料を対象とした繰返しねじりせん断試験を行い,これまでに蓄積してきた既存の実験結果とともに地震波荷重のランダム性に関する補正係数を定量的に立証することで,現行の液状化判定の高度化に寄与すると考えている. 2020年度は,東日本大震災の地震記録を用いて,巨大海溝型地震による東日本地域の地震動の特徴を整理した.その結果,震源域内の複数のすべり域の影響を受けて観測地点毎に等価繰返し回数が異なることがわかった. なお,新型コロナウイルス蔓延の影響を受けて,上記の室内要素試験を実施する制限があったことから,2019年度に実施した首都圏で想定されている異なるタイプの地震波形に対する実験結果を用いて,不規則波が作用した際のせん断ひずみの発現の特徴やその評価について分析した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,粒度特性を変化させた地盤材料(東京湾浚渫土)に対し,供試体の密度状態(緩い,中位,密詰め)を変化させ,内閣府中央防災会議にて公開されている首都直下地震と東京都港湾局で想定されている大正関東地震相当の地震波形に対する同種の実験を行う. これらの実験結果からは,本申請者がこれまでに実施してきたように地震動の波形特性が液状化強度にどの程度寄与するかを正弦波の液状化強度比と比較することで定量的に表す指標を得る.さらに,地震波形の形状,地震波荷重のランダム性に関する補正係数C2,液状化強度比をパラメータに定量的に評価できるチャート式を考案する.これらの成果は,現行の液状化判定方法の高度化に寄与することが期待できる.また,現在検討を試み始めたエネルギー的な解釈や累積損傷度理論とも比較し,同指標の妥当性を評価する. また,波形形状の分析として,2020年度は東日本大震災時の東日本地域の地震動記録に対して,マグニチュードや震央距離,最大加速度,地震波の波形形状の特徴を分析した.本年度は,その結果を用いて各パラメータの相関分析を行い,マグニチュードや震央距離の違いによる有効波数の地域特性を解明する. 要素試験より得られた実験チャートと既存観測記録による有効波数の地域特性を関連させることで合理的な液状化判定方法となることを立証し,得られた結果を取りまとめ,成果の発表を関連する学会で行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議(ICSMGE)への論文投稿費や参加費として2021年度に計上する. 2020年度は海外研究滞在を予定していたが新型コロナウイルスの影響により渡航ができなくなったことや,学内施設の利用の一部に制限があったため,2020年度に実施予定していた室内試験内容を2021年度に計上する.
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