本研究は,現行の液状化判定法の高度化を目指し,南海トラフの巨大地震や首都圏などで想定される地震波荷重が液状化強度特性に及ぼす影響に関して実験的に解明し,地震波荷重のランダム性に関する補正係数を定量的に立証することを目的としたものである. 粒度特性が異なる地盤材料(豊浦砂,東京湾浚渫土)に対し,供試体の密度(緩詰,中位,密詰)を変化させ,継続時間の異なる地震波形による繰返しねじりせん断試験を実施した.地震波形には,東日本大震災での浦安波と原町波,熊本地震での益城波を用いた.加えて,今後発生が危惧される東京湾北部地震や関東地震の想定波形も用いた. 液状化に至る過程を有効応力経路で比較すると地盤材料の違いや供試体の密度の違いによらず,供試体の塑性変形に伴う過剰間隙水圧の上昇する時点はせん断応力の載荷方向で履歴最大となる有効せん断応力比を更新した時点と一致することを確認した.そして,せん断応力履歴を更新する以前に多数回の不規則なせん断応力履歴を受けると,有効せん断応力比を更新した時点での有効拘束圧の低下が大きくなることが分かった.このことから,東日本大震災の継続時間が長い地震波形は有効せん断応力比の繰返し波数が多いため,より液状化し易い波形特性であることが実験的に解明された. 次に現行の液状化判定法を高度化するために,地震波荷重の不規則性に関する補正係数(C2)を地盤材料や密度,地震波形状の違いに対して求めたところ,各地震波の最大せん断応力の6割以上の繰返し回数(有効波数)と相関があることがわかった.C2は,有効波数が多く,細粒分を含まない均質な砂の場合に最も小さくなり,有効波数が少なく細粒分を含むとC2は大きくなる.また,有効波数が多い海溝型タイプの長時間継続する地震波では,液状化強度比が大きいほど,不規則波形の効果を受けやすいことが定量的に明らかになった.
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