研究課題
油価低迷の中、石油の生産手法として、コスト削減と同時に回収率を向上かつ環境への負荷が少ない低濃度塩水攻法が注目を浴びている。しかし、この回収法は どのような油田(原油・油層水・岩石の特性)で効果を発揮するか,どの程度効果(回収率増加)があるのかとの評価が難しい。本研究では、岩石空隙構造の形状、流体の性質などの影響を考慮し、低濃度塩水攻法の回収率の評価及び向上を目的としたマルチスケールモデルの開発及び大規模デジタル岩石シミュレーター の構築を目指している。 令和2年度は開発した低濃度塩水攻法のためのマルチフィジックスモデルを超大規模デジタル岩石シミュレーターに拡張した。実岩石形状モデルでシミュレーションを行った結果、直接に低塩分水を圧入した場合は50%の石油増産効率が得られた。塩分濃度の拡散係数が石油増産効率へ与える影響についても調査した。その結果、油滴周囲の塩分濃度勾配による濡れ性の非均一性が新たな低濃度塩水攻法の増産メカニズムになることが示唆された。また、従来の三相流浸透率の経験式では、粘性カップリング効果は無視されてきた。我々は開発したシミュレーターを応用し、粘性カップリング効果を考慮できるように、従来の浸透率の経験式を改良した。さらに空隙内部における粘性比が異なる三相流れを直接に解析した結果からデータベースを構築し、新たな機械学習手法を使用した三相流浸透率予測する方法を開発した。
3: やや遅れている
当初の計画では超大規模実岩石X線CTモデルで、低濃度塩水環境下油挙動のシミュレーション結果とcore scaleの実験結果を直接比較・検証する予定があったが、実験データは入手できなかったため、未実施となった。
次年度では、デジタル岩石での大規模計算によって、岩石空隙構造の形状、油層の連続性、浸透率、圧入指数、流体の性質などによる低濃度塩水攻法の回収率への影響を明らかにし、回収率向上に寄与するキーパラメータを発見する。また、得られた結果から、塩水濃度と浸透率の関係式を考案し、貯留層解析へ応用することで、低濃度塩水攻法の石油生産挙動を予測する。
参加予定の国際学会がオンライン開催となり、剰余の予算は次年度の消耗品または論文投稿料に充てる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
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