研究課題/領域番号 |
19K15102
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
後藤 岳久 中央大学, 研究開発機構, 機構准教授 (70634682)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非平衡流砂運動 / 浮遊砂 / 掃流砂 / 準三次元解析法 / 洪水流・河床変動解析法 |
研究実績の概要 |
洪水時に大量の土砂移動を伴う低平地の砂河川では,浮遊砂の輸送が卓越している.一般に,砂河川における河床変動計算では,洪水中の流砂運動を掃流形態と浮遊形態とに分け,掃流砂の運動は平衡掃流砂量式により計算し,浮遊砂の運動は底面の平衡流砂濃度を境界条件とした浮遊砂の移流拡散方程式により計算してきているため,それらの相互作用が考慮されておらず底面で平衡状態の仮定が用いられていることに課題が残されている. 本研究では,底面付近の流れと流砂運動の非平衡性を考慮するため,掃流砂と浮遊砂,底面付近の流れの相互作用を取り込んだ洪水流・河床変動解析法の開発を目的としている.そこで,底面付近の流れと流砂の非平衡運動を解析するため,流れの領域を鉛直方向に主流領域と掃流層領域,両者を接続する接続領域に分類した.そして,主流領域の流れ場は,水深積分モデルの枠組みで三次元流れを解析出来る準三次元解析法(Q3D-FEBS法)により流れを計算し,掃流層領域の流れと流砂の掃流運動は,非平衡性・相互作用を考慮した二相流の運動方程式から計算することとした.掃流層内では乱れの鉛直成分の作用を考慮した粒子の鉛直方向の運動方程式より,掃流状態から浮遊状態に遷移する流砂フラックスを表現した.乱れの作用については,乱れの分布を掃流層内の3方向の乱れ強度を計算された乱れ強度を標準偏差とした正規分布と仮定して評価した.そして,掃流砂から巻き上げられ浮遊砂に遷移した流砂の移動は,接続領域および主流域において,浮遊砂の移流拡散方程式により表現した. 構築した解析法を,橋脚前面の洗掘された土砂が浮遊砂として巻き上げられていた既往の移動床実験に構築した解析法を適用した.構築した解析法は,平衡状態の仮定を用いた従来法に比べて,橋脚前面から背面まで回り込む橋脚周りの洗掘を説明出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,広域の解析が可能な水深積分モデルの枠組みで,掃流砂と浮遊砂の相互作用を考慮した洪水流・河床変動解析法を構築することである.本年度は,申請者の所属する研究室で既に構築されている準三次元解析法(Q3D-FEBS法)をベースとして,底面での乱れ強度の輸送方程式,2相流の考え方に基づいた流れと流砂の支配方程式を導出し,数値解析プログラムを作成した.そして,構築した解析法の検証として,橋脚前面の洗掘土砂が浮遊砂として巻き上げられていた移動床実験に適用し,橋脚前面の洗掘とそれが背後まで回り込む現象を説明出来ており,本研究は順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
構築した解析法を現地河川に適用して検証するとともに,現地河川に本解析法を適用するための解析法の簡略化や,現地河川の洪水中に浮遊砂の挙動が河床変動に及ぼす役割を明らかにし,低平地河川の河川管理に資する情報を提供する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度では,主に研究用PCおよび計算結果描画ソフトの購入費,国際学会の発表の旅費に支出したが,旅費については出来るだけ最低費用の行程としたため,資金に余裕が生じた. 今年度では,浮遊砂の卓越する阿賀野川河口砂州に本解析法を適用し検証する予定であり, その現地調査,旅費等に使用する予定である.
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