研究課題/領域番号 |
19K15103
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小野村 史穂 東京理科大学, 理工学部土木工学科, 助教 (40822937)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水害 / 降水 / 浸水 / モバイル観測 / モビリティネットワーク / 自動車 / 水工学 / 水文気象学 |
研究実績の概要 |
1) 降水量モバイル観測システムの開発について:当初の計画通り,小型ハイスピードカメラで撮影した連続画像から降水量を推定する手法を開発した.実際の降雨において,弱雨から強雨まで計測することを確認し,市販の雨量計や光学式雨滴計と同様の計測結果が得られている.一方で,画像による手法は,移動時や豪雨時に計測誤差が大きくなる傾向が見られ,別途小型の降雨センサ開発にも着手した.小型降雨センサは,自動車の対物検知センサとして既に用いられるドップラーモジュールをベースとしており,安価で車載型としての展開に適している.実際の降雨と人工降雨において精度検証を実施し,定点計測だけでなく移動しながらも計測可能であることが確認された.車載型として最適な手法を探りながら,開発を着実に進めてきている. 2) 浸水深モバイル計測システムの開発について:浸水深計測には既存の超音波センサを用い,定点計測および移動計測の実験を行った.実験では,自動車の浸水状況を再現するため,開水路に濁水を50cmの深さに溜め,水路床の一部に障害物を設置することで浸水深に変化を付けた.定点観測では,浸水深を数cmの精度で計測でき,障害物による浸水深の変化も捉えることができた.一方,移動計測では,移動速度に伴って浸水深が大きく変動し,計測が困難であることも分かった.こうした状況を踏まえ,カメラ等を用いた他の浸水深計測方法も視野に入れ,引き続き開発に取り組んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
車載型降雨観測システムのベースとなる画像による雨量推定方法を確立し,2019年12月の国際学会で発表し,高い関心を得た.その一方で,画像による推定手法は,移動時や豪雨時に課題が多いことも分かり,更なる改良を加えるとともに,別途,小型の降雨センサ開発にも着手した.小型降雨センサは,すでに実降雨と人工降雨において検証を行ない,移動計測への適応可能性が示されており,その結果を国内の論文集へ投稿し,2020年夏に掲載が決まっている.移動しながらの浸水深計測手法については,超音波センサを用いた実験を実施したが,移動時の誤差が大きいことが分かり,他の手法も視野に入れた開発を試みている.以上より,当初計画した手法に加え,車載型としてより適した計測手法を模索しながら開発・改良を重ねており,順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,開発している降水量浸水深モバイル観測システムを自動車に搭載し,本格的な移動観測試験を行う.移動観測時の周囲の環境や自動車の動きがもたらす計測データへの影響も加味するため,カメラやGPS,加速度計等も車載する予定である. さらに,移動計測によって得られたデータを自動で転送・収集するシステムを構築し,モバイル観測で得られた降水量や浸水浸をグラフやマップ上に示し,水災害のリスクを可視化できるようにする.
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