研究実績の概要 |
本研究は,センシングデータと交通流理論の融合により,実社会のネットワークの交通状態を推定する状態空間モデルの開発を目的とする. 2019年度は,(1)状態空間モデルの精度検証および(2)計算負荷軽減のための手法開発を行うとともに,(3)実社会のプローブデータの収集・解析を行った. (1)状態空間モデルの精度検証については,仮想ネットワークを用いた精度検証を行った.精度検証では,実社会での適用を想定し,一般道路と高速道路両方を組み込んだネットワークを構築し,交通シミュレーションを用いた実験を行った.その結果,OD需要パラメータの増加に伴う事後確率分布推定の計算負荷が大きいことがわかった.本成果は,論文に取りまとめ,学会発表を行っている. (2)の計算負荷軽減のための手法開発について述べる.当初は,OD需要の推定パターン数を減らすこと,もしくは,モデル化を行うことで計算負荷が軽減できると想定していた.しかし,検討の結果,計算負荷が期待したほど減らせないことがわかった.そのため,計画を変更し,事後確率分布をモンテカルロ近似する方法の改良案を提案した. (3)プローブデータ解析では,モデルにデータを組み込むための準備として,プローブデータの収集と解析を行った.解析の結果,プローブのGPSデータはノイズ(e.g.位置の誤差)があることがわかったため,まずは,データクリーニング(前処理)方法を開発することとした.プローブデータの種類によっては,データ取得間隔や対象車種が異なるため,本年度は,それぞれのデータの特性を踏まえた処理方法を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,状態空間モデルの検証を行うことで,計算負荷軽減の課題を明確化できた.また,その成果を論文や学会発表により外部に発信できた.計算負荷の軽減方法については,現在,論文にとりまとめ,投稿中である.実社会のプローブデータの解析については,引き続き,実施し,モデルへの組み込みを検討する. 以上より, 本研究課題はおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,ドライバーの経路選択のモデル化を検討するとともに,引き続き,計算負荷軽減の方法を研究する.提案する方法については,シミュレーションにてモデル検証することを考えている.また,実社会でのモデル適用を想定し,センシングデータ(e.g.車両感知器,プローブデータ)の特性を踏まえた前処理方法およびモデルへの同化方法についても検討する.
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