研究課題/領域番号 |
19K15107
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川崎 洋輔 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (90751793)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 状態推定 / 交通流理論 / 経路選択 / データ同化 / プローブデータ / 車両感知器 |
研究実績の概要 |
本研究は,センシングデータと交通流理論の融合により,実社会のネットワークの交通状態を推定する状態空間モデルの開発を目的とする.2020年度は,(1)計算負荷軽減のための手法開発および(2)事故発生時の状態推定手法の開発を行なった. (1)計算不可軽減のための手法開発については,事後分布を求める際の計算方法をモンテカルロ近似する際の粒子の数を減らす融合粒子フィルタを応用することで,計算不可の低減を図った.仙台市を対象に提案モデルを適用した結果,大規模ネットワークにおいても提案モデルは,メモリオーバーなく,実行できた.また,モデルによるOD交通量の推定値に着目すると,フィルタリングにより,状態空間モデルに入力した初期の擬似OD交通量(偽のOD交通量)は,時間進展とともに,真のODに近づいていることが確認された.また,特定経路の渋滞状況の再現性を検証した結果,ボトルネック交差点の位置がシミュレーションと推定値で一致したことを確認した. (2)事故時の状態推定については,事故時に変化する(低下する)交通流率を状態空間モデルで推定する手法を提案した.具体には,交通流モデルの入力パラメータであるfundamental diagram(FD)の交通流率を確率変数とし,逐次,観測される車両感知器データとプローブ車両データを融合解析し,交通流率を推定するモデルを提案した.首都高速道路の事故発生箇所で提案手法を適用した結果,車両感知器と同程度に精度よく交通流率を推定することが出来た.また,事故後の交通流率の低下および事故渋滞解消時の交通流率の回復の過程をモデルが追随している様子が確認された.なお,モデル適用にあたっては,予めプローブデータの中のエラーデータを除くといった前処理を行なった.社会実装にあたっては,データの前処理のリアルタイム化も検討が必要と考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,モデルの理論構築の他,実社会のネットワークにモデルを適用することで,モデル性能を検証することができた.検証事例数が少ないといった問題があるが,引き続き,事例を拡充することで,モデルのロバスト性を検証できると考える.また,研究成果は,論文や学会発表により外部に発信できた. 以上より, 本研究課題はおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,ドライバーの経路選択のモデル化を検討するとともに,引き続き,実社会ネットワークを対象としたモデル検証を行う.また,実社会でのモデル適用を想定し,プローブデータの特性を踏まえた前処理方法およびモデルへの同化方法についても検討する.モデルの実装及びデータ前処理方法の検討は,アクセスコントロールされた高速道路を対象に行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により,出張を予定していた現地開催の学会がオンライン化されたため,旅費が予定よりも余った.
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