研究課題
本研究は,センシングデータと交通流理論の融合により,実社会のネットワークの交通状態を推定する状態空間モデルの開発を目的とする.2021年度は,(1)実社会ネットワークでのモデル検証,および(2)事故発生時の状態推定手法の開発を行なった.(1)実社会ネットワークでのモデル検証については,首都高速道路のネットワークを対象にモデルの精度検証を行った.検証にあたっては,モデルのロバスト性を検証するために,”渋滞・非渋滞”,“同時間帯・複数日”,“複数のセンサー配置パターン”といった多様なパターンでのモデル検証を行った.検証方法は,車両感知器データを正解(真値)とし,モデルには感知器を用いない条件の下,感知器とモデル推定値を比較することとした. 検証の結果,モデルは,現状の車両感知器と同程度の精度を担保できていることが確認された.(2)事故時の状態推定については,過年度開発した事故時に変化する(低下する)交通流率を状態空間モデルで推定する手法を改良した.具体には,交通流モデルの入力パラメータであるfundamental diagram(FD)の交通流率を確率変数とし,逐次,観測される車両感知器データとプローブ車両データを融合解析し,スムージングにより交通流率を推定するモデルを提案した.首都高速道路の事故発生箇所で提案手法を適用した結果,過年度のモデルよりも精度向上が図られた.今後は,推定した交通流率を交通流モデルの入力パラメータとして扱い,リアルタイムに事故時の交通状態を推定することが課題と考える.
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Journal of Japan Society of Civil Engineers, Ser. D3 (Infrastructure Planning and Management)
巻: 76 ページ: I_1297~I_1309
10.2208/jscejipm.76.5_I_1297