研究課題/領域番号 |
19K15110
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
高柳 百合子 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 准教授 (10356024)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コンパクトシティ / 歩行者関連施策 / 街路空間 / 歩行空間 / 地方都市 / 体系的施策立案プロセス |
研究実績の概要 |
現在、全国の地方都市で進められているコンパクトシティ政策の目標を達成するためには、集約する区域を定めるだけでなく、区域内にある車中心に整備された都市空間を、歩きたくなる魅力的な歩行空間へと再編していく必要がある。ここ数年、実務レベルで立地適正化計画の策定過程において、都市全体の公共交通網を中心としたネットワーク構造の評価が行われる場面は増えており、その評価指標等が国から地方自治体向けに提供されている。また、賑わいや居心地の良い街路空間を創出するための個々の街路空間を評価する手法も整理され、国から同様に提供された。しかし、これら二つを連続するものと捉え、都市構造評価の結果を個々の街路空間に対する評価として捉えなおし、地方都市の実情に即した形で、街路空間評価を実施する体系的な施策立案プロセスは確立されていない。 そこで本研究は、コンパクトシティ政策に取り組む地方自治体が、住民が歩くことを重視する政策を展開していく道筋として、地方都市に適した街路空間評価手法を開発することを目指している。2019年度は、10年以上前からコンパクトシティを推進してきた富山市において、立地適正化計画の誘導区域に定められたエリアを対象として、本研究が提案する街路空間評価を試行した。具体的には、富山市全体のネットワーク構造の影響を踏まえたマクロな街路空間評価を行い、その評価結果から抽出された複数エリア内の内、富山駅周辺について、現地調査に基づくミクロな街路空間評価を試みた。その結果、富山市がコンパクトシティ政策として実施した、路面電車の延伸による環状線復活というマクロな都市構造の再編によって、車を利用しない者にとってアクセスが改善された箇所と、賑わい広場の新設というミクロな街路空間の再編によって、歩行空間の質が改善された箇所とは整合的であった。これについては速報として土木計画学にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミクロな街路空間評価の手法に関して、実態調査の結果を踏まえると、評価分析の段階から改変するのではなく、アプローチを変えて、実態調査の段階から手法を再構築する方がより適切であると判断した。当初計画では、1)実態調査→2)評価分析→3)施策立案の順を前提にして実証を進める予定だったが、1→2→3ではなく、空間改変を前提とする評価手法として、1に遡って全体を見直すこととした。 当初から、歩行者利用の多い大都市において開発され適用されている評価手法を、そのまま地方都市に適用するのではなく、地方都市の状況に合わせて手法を改変することを予定していたことから、改変自体は研究の進捗を意味するが、全体の枠組みから見直すこととしたため、進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、異なるアプローチでの実態調査を加えることにより、ステップの進め方も含めて全体の見直しを行う。対象都市も、富山市より人口規模の小さな都市を加え、いくつか異なる調査方法を試行することを予定する。これにより、実態として歩行者の数や歩行距離が小さい地域においても有用な手法に改善することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、調査結果のデータ化から、そのまま分析を進めるのではなく、手法全体を見直すこととしたことに伴い、使用する予定であった謝金の一部を減額したため。また、海外ヒアリング調査の延期により、旅費の使用額を減額したため。 次年度使用計画としては、実態調査及び評価について、対象地区と内容を複数パターン試行に変更して実施するために、新たに発生する郵送料や調査被験者に対する謝金、また、街路空間内に一時的に改変を施すための実験用の物品購入費ないしレンタル料に使用することを計画する。
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