本研究では、歩行活動を促進する環境全般を含む概念であるWalkabilityに着目し、地理的環境変数によりその特性を総合的に把握できるWalkability Index(WI)を用いて、歩行空間整備の効果を評価しうる手法を開発する。具体的には次の2点により手法の有効性を検証する。(1) 地理情報システム(GIS)を用いて、歩行空間整備前後の近隣のWIの変化を把握できる解析手法を提示し、国内外の事例に適用する。(2) WIの構成要素に関して、アンケート調査で得た歩行活動量データを用いて解析を行い、街路の空間構成や空間の質を評価可能な枠組みを示す。 (1)に関しては、メッシュ化により歩行空間周辺の詳細なWI分布を把握する手法を提案し、国内の歩行空間の分析を通して、WIの高い場所を繋ぐような歩行空間の整備が、近隣のWalkabilityの向上や賑わい創出の上で有効であるという結果を得た。さらに分析枠組みの妥当性を検証するため、(2)のアンケート調査で対象とした国内の歩行空間周辺を対象に、整備前後のWIとその構成要素の変化を分析した。結果、整備による道路ネットワークの変化によりWIがエリア全体として有意に変化することを示した。 (2)に関しては、街路の構造特性と沿道特性から街路を分類し、居住地周辺の分類別の街路延長を算出することで街路特性(空間の質)を表現した。既存のWIの構成要素や街路特性と居住者の日常・余暇歩行活動量との関連を分析した結果、歩行目的ごとに街路特性の影響が異なり、さらに余暇歩行活動を促進・抑制する要因を示した。さらにこの街路特性を2時期のデータの分析に拡張した結果、歩行空間整備後に歩行活動が増加した層に対して、整備とともに変化する街路特性が歩行活動の増加に影響することが示唆された。加えて実際の流動人口データを用いて、街路の利用のされ方と街路特性との関係把握を試みた。
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