本研究課題は,多様なプレイヤーが参画する公共ガバナンスの本質が「コミュニケーション」にあると考え,Sperber and Wilsonによって提唱された関連性理論(relevancy theory)を拡張して,コミュニケーションを有効に機能させるための新たな解釈フレーム (メタフレーム)を形成する役割を担う主体としての中間組織に着目した. 本研究は,関連性理論に依拠しながら,コミュニケーションの媒介者の存在意義を「メタフレーム」という概念を導入して媒介者が存在するコミュニケーションメカニズムを形式的に表現することを目指した. 1年目の令和元年度では,研究計画で示した「課題B:中間組織のメタフレーム形成機能に関するケーススタディ」に取り組み,研究代表者が所属している「松山アーバンデザインセンター」の取り組みを整理した.また,関西大学の戦略基盤団地再編プロジェクトによる取り組みについても,現地でインタビュー調査を行い,同プロジェクトが行政など様々なステークホルダーの媒介役となってメタフレームを形成している可能性が示唆された. 最終年度においても前年度からの研究を継続し,松山アーバンデザインセンターが,公共デザインの現場において,市民や民間組織,行政などの関係するステークホルダーを媒介している事業を抽出し,メタフレームの存在について考察を行った.また、松山アーバンデザインセンターの取り組み内容や役割については、論文および書籍にまとめている.
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