過年度の調査を踏まえ,土木バッシングに関する人々の意識の,国際比較および世代間比較分析を行った.その中でも特に,2011年の東日本大震災やその後も続く様々な災害を契機とするものと想定される,報道傾向の変化も定量的なデータとして明らかになった.さらに,そうした報道の変化と整合するような,公共事業に対する世代間の認識の差が存在していることを示す分析結果を得た.つまり,40代以上の世代は,ムダや環境破壊などの公共事業に否定的な論点への認識が強い一方で,30代以下の世代においてはそうした否定的な認識が形成されていないことを示唆する結果が得られた.こうした世論状況の変化や,意識の世代間ギャップは,人々の意識変容に対する情報提供効果を検討するために重要な知見が得られたものと考えられる. そして,本年はネガティブイメージ改善のために,どのような情報によるコミュニケーションが効果的なのか,検討し,実証するためのWebアンケート調査を行った.除雪という具体的な事業内容の周知による情報提供効果を検証した結果,生活に直結している地域においては,肉体的苦労よりも精神的な苦労についての情報がイメージ改善に効果的である可能性が示された. 期間全体の研究を通じ,これまで問題視されてきた土木へのバッシング意識を,社会情勢に対する認識との関連で分析するとともに,国際比較や世代間比較,若年世代に着目した分析するなど,多角的な側面からデータを取得・分析し,その意識構造を明らかにするとともに,その改善に向けた実践的な知見も得ることができた.
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