研究課題/領域番号 |
19K15121
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 まゆみ 東京大学, 教養学部, 特任助教 (50782869)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 水道水 / 水環境 / 水質分布 / 硬度 / 日本 |
研究実績の概要 |
水道水は毎日の生活の基本的資源であり、飲用などの生活用水のみならず、工業用水など日常の活動に必ず使われるものである。本研究では、日本の「水道水」について、有害/無害にかかわらず多くの元素を網羅的に高精度で分析し、その濃度分布を可視化、地域差や水道供給過程の変動を調べることにより、日本の水道水を取り巻く環境を評価することを目的としている。 2020年度は、2019年度に引き続き日本国内の水道水サンプルの採水を行い、47都道府県全ての水道水を採水することができた。また、研究協力者の助力により、海外の水道水の収集もできた。2019年度から採水したサンプルは、世界27か国、約800地点に及ぶ。これらサンプルについて、ICP-OESにより無機元素24元素の分析を行い、主要カチオン(Ca, Mg, K, Na)および硬度に着目し、その濃度の世界分布と日本国内の分布を明示した。27カ国の水道水と比較し、日本の水道水はミネラル分が少なく、軟水に分類されることが示された。一方、軟水ではあるが、その分布範囲は広く、関東地方は硬度が高く、北海道・東北地方は低い傾向にあった。日々の硬度変化は殆どなく、概ね安定していることが確認された。さらに、水道水の硬度に及ぼす配管の影響を調べるため、統一的指標を提案し、データ解析を行った。その結果、日本のどの硬度の地域においても、浄水場取水口(原水)から浄水、そして水道水栓へと供給されるまでの過程で硬度は±20%変化することを明らかにした。これら変動は、浄水過程や水道供給配管の影響ではなく、原水の水質に由来するものと示された。また、ニッケルや鉛が検出される地点もあったが、地域性はなく点在していることから、供給配管などインフラ設備に由来するものと示唆された。これらの成果についての論文化を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はCOVID-19の影響によりフィールドワークが困難な状況となったが、協力者の助力もあり当初計画において必要不可欠な47都道府県約700地点の試料を収集でき、予定を上回るサンプル数に及んだ。日本の水道水のカチオンおよび硬度について、濃度分布状況をマッピング、可視化することができ、本研究の目的の一つが達成できた。また、水道水質に供給配管が及ぼす影響について、独自の指標を用いて解析を進め、水道供給過程での水質変化と配管の関係を定量的に示すことができたのは、大きな成果の一つである。これらの進捗状況から、研究はおおむね順調と判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナ禍により国内外の精力的なサンプリング活動は難しい状況にある。そのため、2020年度までに収集したサンプルの分析、データ解析を精力的に行う。前年度までに取り組めていない水道水中の重金属元素について、地域分布だけでなく、水道配管が水質に与える影響について評価する。さらに2021年度は陰イオン種についても分析を行う予定である。他項目にわたる分析データが集まるので、多変量解析などの統計処理を進め、各項目の関連性や相関関係の有無について明示を試みる。これらにより、日本の水道水の取り巻く環境を総合的に精査していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、フィールドワークの制限、および、参加予定であった国内・国際学会の中止が相次いだため。
|