研究実績の概要 |
令和3年度までに炭素化後の酸性官能基減少による疎水性向上、カーボンナノファイバーマット(CNFM)空間の大きさの制御で重油を効率良く吸着することを報告した。 最終年度の主な研究実績を以下に示した。(i)原料PAN/DMF濃度を7.2-14 wt.%とし、電界紡糸(印加電圧20 kV, 押出速度1.2 mL/h)を行ったところ、12 wt.%のときに取扱が容易なCNFMが得られた。(ii)不融化 (空気中280℃、350℃、3-6 h、0, 40, 60 kPaで引張)と炭素化(Ar中800℃, 1 h)により、CNFMを作製した。60 kPaの引張では不融化時にサンプルが破断した。(iii)CNFMの表面官能基の種類は作製条件によらず同様であった。(iv)作製条件の異なる8種のCNFMの空間の体積分率は85-96 vol.%と算出された。不融化時間が3 hのときに、引張の有無による空間の体積分率の差は0.1 %程度であったが、6 hでは引張有は引張無に比べ6 %大きくなった。280℃と350℃の不融化温度の違いによる影響はわずかで差は0.1%程度であった。したがって体積分率の制御はPANNFMの作製条件の検討だけでなく、不融化時の引張と時間の調節により可能であることが示唆された。(v)画像分析から得られたCNFM内の代表的な空間の大きさと重油吸着量に明確な相関関係は見出すことができていない。さらに、吸着量は空間の体積分率の大きさには必ずしも影響されなかった。ただし、不融化時間6 hで引張有の場合に、引張無に比べ、空間が6 vol.%程度、重油吸着量は4 wt.%大きくなった。CNFMの重油吸着量は自重の約13-20倍で、市販の吸着剤の約3-5倍大きかった。 研究を通して最大の課題となっているCNFMの機械的強度の向上を目指し科研課題(22K14354)にて研究を開始した。
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