本研究では、クロロエチレン類を完全分解・無毒化できる細菌Dehalococcoidesと共生可能なグルコース発酵微生物による汚染物質の溶出促進効果で、土壌に吸着しているクロロエチレン類の分解促進が可能であるかを検証した。 過年度までの研究で、クロロエチレン類の反応速度論的解析や土壌からのクロロエチレン類溶出量の測定方法を検討し、微生物によるクロロエチレン類の分解を評価するための手法を開発した。また、6種類の土壌および3種類の微生物共生系を用いて、土壌に吸着しているクロロエチレン類を溶出・分解するためのpHやグルコース等の炭素源の最適条件を明らかとした。 2022年度は土壌や炭素源となる有機物が異なる試験条件下で微生物共生系を接種源としたクロロエチレン類の分解試験を行い、グルコース等の有機物により分解が促進することを再確認し、過年度までに確立した手法で反応速度論的に分解速度を解析した。さらに微生物のRNA抽出および遺伝子解析を行い、何れの条件においてもDehalococcoidesが分解を担う主要な微生物であることを再確認した。土壌からのクロロエチレン類の溶出を引き起こす微生物種の特定には至っていないが、今後詳細な遺伝子解析を進め、微生物学的視点から土壌粒子存在下でのクロロエチレン類の溶出・浄化メカニズムの解明につなげる予定である。 これまで、クロロエチレン類の微生物による浄化研究は水を媒体としたものが多く、土壌を媒体としたものはほとんどなかった。本研究は、同じ微生物共生系を利用しても土壌により大きく浄化速度は異なることを明らかとした点に意義がある。また、土壌存在下での浄化を促進するための諸条件を解明することができ、この成果を基礎データとして浄化技術の開発に繋げたいと考えている。
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