コンクリート構造物の主材料として使用されるポルトランドセメントの製造過程では、1400~1450°Cで石灰石を焼成した時の熱分解や化石燃料の消費により大量のCO2が大気中に排出されている。日本ではCO2排出量全体の約4%、世界全体では約8%がセメント生産によるものである。通常1トンのOPCを製造するのに0.75~0.85トンのCO2が排出されており、CO2削減の観点からセメントに代わる材料の需要が高まっている。 本研究は、セメント生産によるCO2排出量を削減するために、環境配慮型の建築材料として用いられるアルカリ活性セメントの縮重合反応生成ゲルであるC-A-S-H およびN-A-S-Hでのアルカリ物質の挙動と役割を明確にしてアルカリ活性セメントの高性能化を目的とする。アルカリ活性セメントに関する研究は多く行われているが、多くの研究が圧縮強度などの特定の性質に着目している。アルカリ刺激剤や結合材の化学組成や物理的特性によってアルカリ活性セメントの細孔構 造や生成物などの性質が大きく変化することが知られており、物理的特性の評価と同時に化学的特性の評価も必要であると考えられる。また長期的な耐久性や炭 酸化などの劣化挙動に関するデータが少なく、実利用として普及していないのが現状である。 そこで本研究は、ペースト段階でのナノストラクチャー分析からコンクリート段階でのマクロなアプローチまで、活用データベースの構築に取り組む。活性バインダーとアルカリ刺激剤の種類および濃度ごとにサンプルを製作し、Ca:Si:Al:Naの比率による反応生成物の微細結合構造分析を行い、Naの結合メカニズムを視覚化する。また、物理的特性の観測から、アルカリ活性コンクリートの物性評価に対する基礎データを構築する。続いて、各劣化条件による化学的/物理的な変化を観測し、Naの結合による劣化挙動を定量化する。
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