研究実績の概要 |
最終年度では、CFT柱の小振幅下での水平2方向繰り返し載荷実験を実施した。試験体は角形CFT柱である。実験変数は、幅厚比(22.2, 33.3)、軸力比(0.3, 0.5)、変位振幅(小振幅を数種類、単調)および水平面内の載荷履歴(水平1方向、楕円軌跡とした水平2方向)、楕円率(短径/長径)とした。得られた知見を以下にまとめる。 (1)本実験の範囲では、ほとんどの試験体において鋼管の局部座屈および充填コンクリートの圧壊に伴う耐力劣化が生じた。ただし、幅厚比、軸力比、変位振幅、楕円率が比較的小さな一部の試験体では、鋼管角部を起点とした延性亀裂の進展に伴い破断に至った。 (2)小振幅下では、局部座屈およびコンクリートの圧壊に伴う材軸方向縮みは、ある時点を境に急激に進行した。その時点は、繰り返し荷重下での軸縮み量が、単調荷重下で最大耐力に到達した時点での軸縮み量に到達した時点と対応した。これは昨年度以前の中空鋼管柱における知見と対応する。ただし、CFT柱では軸縮み量と耐力劣化の度合いに明瞭な相関はみられず、この点は中空鋼管とは異なった傾向である。 (3)軸縮みが急激に進展する起点に至るまでの繰り返し回数は、楕円率が大きくなるにつれて低下すること、中空鋼管柱よりもCFT柱の繰り返し回数は多くなることがわかった。 研究期間全体を通じて、CFT柱およびその分析にあたっての基礎データとなる中空鋼管柱について、載荷振幅や水平2方向載荷が劣化挙動や繰り返し変形性能に及ぼす影響を分析した。中空鋼管については、不安定な挙動を示す起点に至るまでの繰り返し回数の評価法を構築できた。CFT柱については、水平面内の載荷履歴によらず、挙動が不安定となる起点を中空鋼管と同様に評価できることがわかった。また、水平2方向載荷によって、不安定な挙動を示す起点に至るまでの繰り返し回数は低下することを明らかにした。
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