粘土地盤に建設された杭支持構造物の地震応答性状を実験と解析の両面から明らかにし、その応答解析法を開発することを本研究の目的とする。このような目的に対して、本年度は以下の成果が得られた。 1) 粘土地盤中の群杭に支持された構造物の模型振動台実験を、大阪大学所有の小型振動台を用いて実施した。基盤(支持層)が加振方向に傾斜した試験体を2020年度、加振直交方向に傾斜した試験体を2021年度に製作し、加振実験を行った。実験の結果、大振幅の入力に対しては粘土地盤が著しく非線形化することで杭周地盤剛性が低下し、杭先端の拘束条件の影響が現れて短い杭の曲げモーメントが先端部で大きくなった。また、大振幅入力により緩んだ地盤は加振後も回復しなかった。これらの結果は、杭周地盤ばねモデルを構築する上での基礎的な知見となると考える。 2) 砂地盤中の杭支持構造物の模型振動台実験に対して三次元有限要素解析を行い、上部構造の加速度波形と杭応力を良好にシミュレートすることができた。粘土地盤中の杭支持構造物の模型振動台実験に対しても同様にシミュレーションを試みたが、低拘束圧条件下の極めて軟弱な粘土地盤のモデル化は難しく、本研究では断念した。そこで、粘土地盤で実施された杭の原位置載荷実験のシミュレーションを三次元有限要素法によって行い、杭応力と変形の関係を良好にシミュレートすることができた。以上のことから、砂地盤と粘土地盤のいずれにおいても、三次元有限要素解析が杭応力評価に有効であることが示された。 3) 三次元有限要素法を用いて、杭周地盤ばねの履歴特性を検討した。粘土地盤中の杭で杭周地盤ばねをモデル化する際には、杭-地盤間の剥離によるスリップ挙動の考慮が重要であることを明らかにした。
|