研究課題/領域番号 |
19K15142
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研究機関 | 新潟工科大学 |
研究代表者 |
涌井 将貴 新潟工科大学, 工学部, 講師 (40778205)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 加速度微分 / 構造ヘルスモニタリング / 非線形性 |
研究実績の概要 |
本研究では、鋼構造建築物を対象として、非構造部材の影響を考慮した構造部材の損傷度推定手法を確立し、それを基にした建物全体の残存耐震性能評価指標を提案することを目標とする。これまでの研究では、加速度センサによって計測された加速度時刻歴波形をディジタルフィルタにより2階微分することで加速度2階微分時刻歴波形を算出した。構造部材のみで構成されている鉄骨造骨組であれば、損傷によって生じる非線形性を検出することが可能であることを示してきた。一方で、非構造部材を含む構造物を対象とした検証や、計測に使用するセンサの種類、微分処理方法については未検証であった。そこで本研究では、非構造部材を含む鉄骨造骨組を対象とした非線形性検出手法の適用性、および加速度の微分処理方法が検出精度に与える影響を検証する。昨年度までに、加速度をアナログフィルタによって微分する加速度微分センサの試作品を製作した。製作した微分センサは、加速度だけでなく、加速度1階微分、および加速度2階微分を出力可能となっている。 今年度は、実建物への実装に向けて、安価なMEMS型加速度センサを搭載した無線によるデータ送信が可能な加速度計を製作し、計測精度を検証するための振動台実験を行った。昨年度の振動台実験では、種々の原因により試験体が想定通りに塑性化しないという問題が発生したため、当該年度は低降伏点鋼を用いて試験体を製作した。試験体は1層の鉄骨平面骨組であり、製作した加速度計と市販の加速度計を梁中央に設置し、実地震波による加振を行った。製作した加速度計と市販の加速度センサの計測結果を比較したところ、時刻歴波形は同様の波形上となり、十分な精度で計測できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度予定した計画としては、「理論構築」「数値解析による検証」「振動台実験の計測データによる検証」の大きく3つが挙げられる。今年度は新型コロナウィルスの感染拡大により研究の進捗に大きな影響があり、予定していた実験が行えないなど、全体的に進捗が遅れている。 「理論構築」については、加速度記録の高次微分のみで非構造部材を含めた損傷評価が困難であることがわかった。「数値解析による検証」については、振動台実験で使用する試験体のパラメータを決定するための数値解析を実施した。解析結果を基に試験体の製作や加振スケジュールを策定した。「振動台実験の計測データによる検証」については、製作した加速度計を用いた振動台実験を行った。解析時に想定していた通りに試験体が塑性化せず、弾性範囲における計測記録による分析までしか行えなかった。 新型コロナウィルスの感染拡大により、年度当初に予定していた研究が進行できず、実験計画も想定通りに実行できなかった。また、試験体が事前に実施した数値解析結果と異なり、想定通りに塑性化しないなど問題が生じており、進捗状況としては遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は、当初の予定よりも遅れた実施となる。また当初予定では振動台を用いた鉄骨造骨組試験体を対象とした振動試験での検討を予定していたが、これまでの検討によって実建物での計測が必要であることを痛感した。そこで、今後の研究では、実建物を対象とした計測も実施したい。振動試験では、数値解析をやり直し、試験体が塑性化するよう試験体の設計を行う。併せて、計測に使用する加速度計や、加速度微分センサの改良を行い、回路特性やノイズ特性について検証する。試験体とセンサの準備が整い次第、振動台実験を実施し、計測結果を用いて提案手法の適用性検証およびセンサの検出精度の検証を行う。対象建物や計測装置の準備が整えば、実建物を対象とした計測も行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大により、予定した学会が延期あるいは中止となり、学会への参加費や旅費を使用することがなかった。また、予定していた振動台実験を実施できなかった。今後は、振動台実験と併せて、実建物を対象とした計測を行うことを予定しており、そのための計測装置の製作費や施工費として使用する。また解析と計測で使用するPCの購入に使用する。
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