本研究は、近年の室内負荷(顕熱、潜熱)の割合の変化、さらに地球温暖化による外気負荷の増加を背景に、デシカント空調機による湿度処理に着目したものである。本年度は最終年度に当たり、研究期間全体を通して、デシカント空調機の設計及び運用において、考えられる設計手法に即した省エネルギー化を目指したシステム全体の評価、再生可能エネルギー利用のポテンシャル評価を実施、運用時においてはデシカント空調機の実仕様を考慮しながら室内環境を損なわないシステム効率向上の性能検証の実証を行ってきた。以下に概要を示す。 デシカント空調機の設計において、日本の高温高湿度の気候下では、予冷コイルが必要となるが、予冷コイル出口の温湿度設定条件によって、コイルへの必要冷水温度が変化する。この温湿度設定条件によって、14℃程度の中温冷水も利用可能であることから、システムの効率向上に寄与できる。また、デシカント空調機と室内側空調機で建物の負荷を処理する場合には、その負荷分担によって合計送風量が異なるため、設計時に考慮することが必要である。設計時における再生可能エネルギーである井水活用の予備検討として、井水を直接デシカント空調機で活用する場合のポテンシャル評価を各都市(東京、大阪、名古屋、福岡)の気象及び各都市の取水条件を考慮し、数値計算により行った。デシカント空調機を採用する都市及び建物規模(必要外気風量)によっては、デシカント空調機で必要なすべての冷水コイル負荷を井水で賄うことも可能であり、設計時より積極的に井水の活用を考慮する必要が示唆された。 運用時においては、デシカント空調機内部のコイル仕様を考慮し、熱源機からの冷水温度を高温化できる可能性を探り、またそれによる室内への影響がないことを実システム及び実運用にて確認した。
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