研究課題/領域番号 |
19K15149
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研究機関 | 静岡理工科大学 |
研究代表者 |
鍋島 佑基 静岡理工科大学, 理工学部, 講師 (10738800)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 潜熱顕熱分離空調 / 吸着 / 計測 / 応答補正 |
研究実績の概要 |
熱顕熱分離空調システムは消費エネルギー削減の観点から有力な手段として着目され,多くのシステムが提案されてきた.潜熱処理の手段としては,吸着材ローターを用いた除湿が一般的であり,すでに種々の吸着材・執着材を用いたデシカントローターの研究開発が行われてきた.既往の研究では,通風試験においてローター通過直後の湿度分布を鏡面冷却式露点計や温湿度プローブなどによって測定がなされているが,デシカントローターは連続的に回転しながら吸着と脱着を行うため,吸脱着量は回転に伴って時々刻々と変化し,さらに回転する吸着材内部の温湿度分布の測定は配線が必要で大型な高精度センサーには困難である.そこで本研究はデシカントローター内の温湿度分布測定による吸脱着特性の解明と、それによるローター形状の最適化を目標に,(1)応答遅れを考慮したローター内温湿度計測技術の構築,ローター内部の温湿度分布測定による、(2)吸脱着過程の解明及び数値解析モデルとの比較,(3)デシカントローターの最適制御・最適形状の検討を目標に研究を遂行した. 本年度は,既往研究において構築したローター内の温湿度測定手法をベースに,より正確な測定値を検出するため,まずセンサーの再選定を実施した.従来使用していたセンサーは相対湿度がレジスタータイプであったため,低湿域での誤差拡大が大きく,吸着材内部の測定には不向きであることから静電容量型の小型センサーに切り替えた.この際無線計測用のタグとの互換性が無かったため,別の計測手段を構築した.ローター内部の温湿度測定が可能となった.現在,厚みが200mm,直径350mmφのローター内に5つの温湿度センサーを設置し,50mmごとに温湿度変化を捉えることに成功している.次の段階として,数値計算の妥当性検証が必要となるため,計算プログラムの改変を現在進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小型無線センサーを用いたローター内温度分布の連続測定を行うため,センサーの単位応答特性について検討し,補正を試みた.さらに,WSSデシカントローターを対象にローター回転数と潜熱負荷をパラメーターに通風試験を行い,ローター表面の温湿度分布を可視化を達成した. 1)小型センサーの単位応答性を検討するために通風試験を行った結果,センサーの応答遅れは温湿度の変化量に関わらず一定であることが確認できた.さらに,通風試験結果をもとに,温度と相対湿度の単位応答式を求めた. 2)小型センサーによって厚みが60mmの薄型ローターを対象に表面付近の内部温度分布を補正した.その結果,温度分布についてはローター回転数7-30 rphの範囲において熱電対で測定した結果と一致しており,補正値の妥当性が確認できた.さらに,ローター内部の相対湿度,絶対湿度変化の可視化が達成できた. 3)絶対湿度の連続測定を行い,除湿再生量の分布を求めた.吸着側では45 °近傍で除湿量のピークが確認された.一方再生量のピークは回転数上昇に伴って250 °から330 °までシフトしており,回転数の上昇に伴う除湿再生分布の変化を観測できた. 4)厚み200mm内にセンサーを設置し,内部温湿度の測定を行った.補正式による補正によって,ローター内温湿度の時間変化を観測できたので,今後は数値計算との比較が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は2種類の形状のWSSデシカントローターを対象にローター内温湿度環境の測定を実施した.そこで,これらの測定結果をもとに数値計算結果や他のローターとの比較を行っていく予定である. ・パージ導入時の温湿度挙動の測定を実施する.研究代表者はパージ導入による除湿量性能向上に関して既往の研究によって報告している.そこで,同様の実験を行い,内部の温湿度挙動を測定する. ・WSSデシカントローターを再現した数値計算プログラムの予測結果との比較を行い,吸着時,脱着時の挙動に差がないかを比較する.また,結果が異なる場合,物質移動係数を再検討するなどして,プログラムの精度向上を実施する. ・異なる吸着材ローター内の温湿度挙動測定の実施を行う.シリカゲル,収着材を使用した市販ローターとの比較を行い,吸着材によるローター内の温湿度挙動の差を可視化する.これらの結果を整理し,ローターごとの最適運転条件や形状について検討する.
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