研究課題/領域番号 |
19K15150
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
NGUYEN THULAN 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (00801169)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 航空機騒音 / 健康影響 / 疫学 / 騒音制御 / 住民反応の変化 / コーホート調査 / うつ病 / 高血圧 |
研究実績の概要 |
本研究ではホーチミン市(ベトナム)市街地に立地しているタンソンニャット空港周辺および2023年に開港予定でホーチミン市郊外(市街地から東に約40km)に建設予定のロンタン空港予定地周辺において, それぞれ騒音の影響に関する社会調査(横断研究)および健康影響調査(縦断研究)を実施します.
2019年8月にタンソンニャット空港周辺の12地区で調査を行いました. タンソンニャット国際空港(TIA)はベトナム最大の空港であり、1日に700以上の離着陸があり、人口の多いホーチミン市の中心に囲まれている。 2019年8月にTIAの近くに住むコミュニティで航空機騒音と不快感、不眠症、肥満、高血圧、ストレス、うつ病などの身体的および精神的健康問題のその他のリスクとの関連を調べるために健康調査が実施された。合計で、飛行機の着陸および離陸ルートの下に散在し、低レベルから高レベルまでのさまざまな航空機騒音に暴露される10対象地区と、影響を受けない2つの制御地区を含む12住宅地で501人の応答を得た。回答者のうち294人が65 dBを超える航空機騒音に暴露された。多重ロジスティック回帰分析の結果により、航空機の騒音が不快感の有病率に大きく影響したが、不眠症や高血圧には直接影響がないことを示した。他の健康指標に対する騒音の間接的な影響も調べた。
得られた騒音暴露量と住民反応の関係を明らかにし, 2008年の暴露反応関係と比較することで騒音暴露量増加による住民反応の変化について検討しております. 現在調査結果を整理・分析し, 国際騒音制御工学会InternoiseとICBEN, 環境疫学会議国際環境疫国際会議ICBENで発表する予定があります. 今年度にロンタン空港周辺でのコーホート調査(プロジェクトの本調査)を実施する予定があり,調査の準備を進んでおります.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年ホーチミンで航空機騒音の影響に関するコホート研究をスタートさせる予定であり、コロナ感染症に影響を受け、ベトナムでは感染者の封じ込めに成功しているようですが、これからの感染状況がどうなるか分からない日本から入国するのは難しい。入国できても何日かはどこかで待機しなければならない。 調査ができるとしても、このような状況で現地の大学が協力してくれる。これまでと同様に現地の学生と教員のご協力を頼む。もし調査できれば、特にアノイアンスにはコロナウィルスの影響が反映されるかもしれないので、貴重なデータを得る可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後ロンタン空港周辺でのコーホート調査の準備を行う。これまで調査してきた迷惑感(アノイアンス)や不眠に加え、血圧やIHD(虚血性心疾患)等の健康影響指標について調査する。面接法による自己申告での健康影響評価にはTotal Health Index (THI)を用いる予定であり、ベトナム語版の調査票を作成する。さらに、血圧、聴力、およびBMIの測定も行う予定である。また、より詳細なデータの収集を目的に、各地域の自治体が管理しているクリニックを訪問し、データの提供を依頼する。また、地域住民の血液や尿の検査結果が入手できるか等も併せて検討する。ロンタン空港は未だ開港前であるため、ベトナム民間航空局(CAAV)から提供された空港計画図により飛行経路下にある住宅地を選定する。2018年9月には既に現地視察を実施しており、併せてホーチミン市の協力大学と打ち合わせを行った。初年度の予備調査では離陸側に5地区、到着側に5地区、コントロール地区として2地区を選定する予定である。ロンタン空港周辺の12地区の計1,200軒を対象に1住戸あたり1名を選定して、面接法によって回答者の健康状態を聞き取り、血圧、聴力、BMIの測定を行う。また、前述のクリニックから、入院と健康検診のデータベースを提供してもらう予定である。同時に、同じ回答者を対象に、タンソンニャット空港の調査と同様の方法で社会調査および騒音実測調査、ノイズマップを描画するための飛行経路データの収集を実施する。以上の調査結果を整理・分析し、研究成果は、日本建築学会や騒音制御工学会などの国内会議、InternoiseやICBEN、環境疫学会議国際環境疫学会等の国際会議で発表する予定である。またJ. Acoust. Sco. Am.やInt. J. Environ. Res. Pub. Health等の国際誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症により、3月に計画していた東京での学会が中止された。 3月の出張費は翌年に繰り越して使用するつもりです。
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